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第31話

夕餉の後 離れがたいような気分でいると ディラが一緒にいたいと言ってくれた グリフは嬉しくて彼を食堂の傍にある居間に誘い お茶を飲もうと提案した 「ハルト様に頂いたのがある」 「ああ……淹れ方を教わったか?」 「うむ。私が淹れるから、グリフが飲んでくれ」 「一緒に飲もう、ディラ」 「うむ」 家の者が用意してくれた茶器と湯をじっと睨み 意を決したようにディラがお茶を淹れてくれる グリフはディラの必死さに笑いを噛み堪えながら見守る ディラは誰に言うでもなく、よし、とか、もういいのか?とか呟いている 「で、できた」 「そうか」 「……どうだろうか。おいしいのだろうか」 「飲んでみないとわからないよ、ディラ」 「う、うむ。では、ええっと……」 「ん?」 「……召し上がれ?」 グリフは堪えきれずに笑ってしまい かわいい婚約者を抱き寄せた 彼の人生でそんな言葉を口にしたのはこれが初めてかもしれない おいしくできろと念じながらお茶を淹れたのも 「ああ……いただきます」 「うむっ」 グリフは痛いほどの視線を受けながら 茶杯に注がれた熱いお茶を味わった 香りも味も申し分ない 温められた唇で口づけを落としながら 隣に座る愛しい男へそう告げると 彼はため息をついて嬉しそうに笑った 「よかった」 「今まで飲んだ中で一番うまいよ」 「そうか」 お世辞だとさえ思わずに もちろんお世辞などではないのだけれど グリフの言葉に満足げなディラは本当にかわいい 自分も緊張した面持ちで茶杯を口にしている 「……ん……なんだか、ハルト様に淹れて頂いた方がおいしかったような……」 「そうか?俺はディラが淹れてくれた方が好きだ」 「グリフがそう言うなら、それでいい」 「ああ。俺もそう思う」 それからふたりはまたゆっくりと話をした ディラが育てていると言っていた花たちが 明日庭を飾ると言う事や これからもたまに王宮へ庭仕事の相談に参上するという話 グリフはお茶を飲み干すと ディラの肩を抱き寄せた もう片方の手はディラの手を握る ディラはグリフの腕の中で身体を預け 両手でグリフの手を握っていた 時々お互いがお互いに口づけながら 「……グリフ」 「ん?」 「明日は?」 「ああ……昼か?」 「夜もだ」 「多分、戻れない……すまない」 「そうか。あちらへ泊まるのか?」 「ああ」 グリフはディラの肩からするりと首筋を撫で上げて髪に触れ 謝罪の言葉とともに口づけする 甘く繰り返されるその口づけに 唇が離れた途端にディラは息をついた 「すまないな、ディラ」 「……今日、少し考えた」 「ん?」 「グリフをもっと知りたいと」 「ああ……そうだな。こういう時間をもっと」 「私の閨に」 「……え?」 「……来て欲しい。今夜、褥を共に」 グリフはディラの唐突な誘いに驚いて返事が出来なかった ディラの手はきゅっとグリフの手を掴む グリフを見上げる顔はほんの少し緊張して見えた 「ディラ」 「……その、……そうしたいと、思った」 「そうしたい?」 「うむ……グリフと、特別な時間を」 「嬉しいよ、ディラ。でも……いいのか?」 「私はこころが狭いのだ」 「それは聞いたが」 「だから……不安が少しでもあると、はち切れそうになるのだ」 「不安にさせたか?」 「不安だけじゃない。……もっと、グリフが欲しい」 「ディラ……」 「愛しあいたい。グリフと、ふたりで。私だけの、グリフに」 聞き取れないほど小さな声で それでもディラの口から愛しあいたいと言われた グリフは顔が熱くなっていくのを止められなかった うあー……やべぇ…… この人わかってて言ってんのかね…… ディラの両手に包まれた自分の手をそっと離し 両腕で彼を抱き締めた ディラはグリフの服の腰の辺りを握る 「……ディラ、俺と愛しあいたい?」 「うむ」 「何するか、知らないだろう?」 「知っている。後宮の出を見くびってはいけない」 「見くびってはいないが、失礼した」 「うむ」 口づけさえしたことのなかった人が 愛しあう実情を知っているとは思えないけれど グリフはそれには触れず華奢な身体を撫で回した 「ディラ、なんでそんな風に思ったんだ?」 「……嫉妬して、目が覚めた」 「そうか」 「本当は前からそう思っていたのかも知れない」 「そうか。ディラ、愛しあう前に、大事な言葉がある」 「……うむ」 「聞かせてくれるか?」 「……愛してる、グリフ」 「俺もだ、ディラ……今宵、愛しあおう」 「うむ」 苦しくないように気遣いながら それでも胸いっぱいのしあわせを伝えたくて グリフはディラを強く抱きしめた ディラはグリフの肩や喉元に額をすりつけて愛しいと伝えてくれた 「では、あとで……グリフ」 「ああ」 ディラはグリフの腕からするりと抜け出し ほんの少し乱れた髪に手をやりながら自室へ戻っていった グリフもしばらく居間にいたけれど 大きく深呼吸をして立ち上がり自室へ戻る マジかー とうとうー グリフは部屋で湯を浴びたり 通うのだからまともな夜着に着替えたりしながら 嬉しさのあまりデレデレヘラヘラしていた 何も知らない彼に一から全部教えるのだ 口づけだけで蕩けそうな顔をするディラに 本気の本物の「こんなの初めて……」だよなぁ 全力で全身くまなく愛しまくって 本物の「そんなとこが感じるなんてぇ……」を引き出すべきだな 「ここで俺を受け入れてくれ」とか言っちゃって 「そんなの入らない」とか言われちゃって 「大丈夫、ディラのここは欲しがってるよ」とかなんとか 「もうだめ、しんじゃ 「グリフォード様」 「ぅはい!?」 「……マディーラ様がお呼びでございます。お越しいただけますか」 「う、うん」 ちょっと妄想で先走りすぎた グリフォードは崩壊寸前の顔面を引き締め 咳払いをして気を取り直すと 呼びに来たマディーラの従者とともに廊下を渡り 彼の部屋へ向かった 静かに扉を開けて部屋の中を進み 一番奥の間にある寝室へ足を踏み入れる いくつもの小さい灯り 床にもテーブルにも花が活けられた花器が置かれていたが 部屋の中にはそれらとは違う甘い香りが漂っていた 「……ディラ」 寝台のそばの椅子に座っていたディラが無言で立ち上がる 今彼が身に付けているのは裾を長く引きずる夜着 前を合わせて腰紐で留める形のそれはグリフのと同じで珍しくはないけれど マディーラのは不思議な色をしていた 「ディラ。逢いに来た」 「ありがとう、グリフ」 音もなくディラがグリフの傍に寄り彼の手をとる 傍で見ると夜着は薄く透けるような生地を幾重にも重ねていた その生地がどれも違う色なので 一目では不思議な色のように見えたのだ 腰紐は夜着に相応しい幅広の柔らかそうな生地だった ディラの引き締まった細腰を引き立てている 甘い匂いはディラから漂っているらしい グリフがそっと彼の額に唇で触れると ディラが手を引いた 「……こちらへ」 「ああ」 導かれるままに寝台に腰を降ろすと ディラが足元に屈みこんでグリフの履物を脱がせてくれた なんだか申し訳ないような気分になる グリフが寝台に仰向けに寝そべると ディラは自分で履物を脱いで上ってきた 「グリフ……」 「うん。ディラ……優しくするよ」 「うむ。私も」 あードキドキする ケツ処女頂くのは初めてじゃないけど やっぱり無二の婚約者のお初をってなると緊張するな 絶対気持ちよくしてあげたいし 何も知らないディラを怖がらせたくない 「では……」 湧きあがる嬉しさを変な顔でどうにか抑え込んでいるグリフに ディラがそう声を掛けた うん、では グリフが身体を起こして愛しい婚約者を抱き寄せようとしたとき 彼の手がグリフの腰紐を引いた ……え するりと躊躇うことなく合わせを開かれ 下穿きも取り去られる ……え。え!? 「デ、ディラ?あの」 「黙っていて、グリフ」 灯りに照らされるディラの顔は さっきお茶を淹れてくれたときと同じぐらい真剣だった すでにちょっと主張し始めているグリフの息子くんを ディラの白く綺麗な手が握る グリフは腰が引けた え?え!?まさか グリフの予感は当たる ディラはその小さく形の良い唇から舌を出し グリフのをチラリと舐めたのだ 「!……ちょ、ディラ!?」 「……」 ディラは無表情に固まり 何事かに納得したようにひとつ頷くと グリフのまだ柔らかさの残る先端を口に含んだ ちょっと待てーー!! グリフの焦りがディラの預かり知らぬところで噴出していたけれど ディラは確実にグリフのを咥えていく 白い手は優しく陰茎を撫で摩りながら どんどん大きくなるグリフの愚息をしっかり飲み込んでしまった そしてゆっくりと吸い上げ舌を這わせ始める 「うっ……く、ちょ、と、ディラ……!」 予想外の事態にグリフは情けないほど慌てた ディラの名前を呼び彼の頭に手をやると ディラは自分のを深く咥えたまま目線をこちらへ向ける きゃー!その顔はだめーー!! 普段花のように美しいディラが 自分のを進んで口で愛してくれていて なおかつ綺麗な紫の目が上目遣いでこっちを見るなんて 荒い呼吸と微かな水音 彼の肩を覆う輝く銀の髪 気持ちいい所を優しく刺激されて グリフはあっけなく達してしまった 早漏決定 そうです早漏です全然もちませんが何か 信じられない あの口づけもお酌も知らないディラが こんな見事にお尺しちゃうなんて そんでもって あまりの気持ちよさにそんなディラの口に光の速さで出しちゃうなんて…… もうお婿さんになれないぃ…… 「……グリフ?」 「あ、ああ」 「すまない、巧くなかったか」 「いいえ、大変結構なお手前でございましたぁ……」 こころの涙を振り払い 不安げにちょこんと正座しているディラを見る ああもう、何がなんだかわからんっ 説明してもらわねばさっぱりだっ 「……ディラ」 「うむ」 「ええっと……」 「習った通りにしたつもりなのだが、至らなかったか」 「習っ……誰に!」 「後宮で、先生に」 「先生ってなんだ!?実地でそういう」 「座学だ」 座学!? 教科書見ながら先生の解説聞きながら はい、このぐらい硬くなったらここを吸います 目安はだいたい力んだときの腕の筋肉程度です あまり強くはいけませんよ~ とかやってんの!? 後宮怖いんだけど!! 「グリフ?もっと精進するから」 「いや……勉強の成果は素晴らしかった……」 「本当か?確かにグリフもすぐ出してくれたしな」 早漏確定 ディラの無邪気な喜びがグリフの自尊心を打ち砕く ううう 男は突発的な事態に弱いんだってば…… 「……ディラは?」 「うむ?」 「初めての実地はいかがだ」 「……言わなければダメか?」 「……怖いけど、聞かせてくれ」 グリフは緊張してその答を待つ ディラは顔にかかった髪をさらりと耳に掛けて 自分の口元を指でなぞりながら躊躇っている 「ディラ?」 「う、うむ。その……ちょっと、変な気分に」 「変?」 「……うまく言えないのだ」 「興奮したか?」 「……うむ。それに」 「ん?」 「グリフが、気をやってくれて嬉しかった」 「……そうか」 今度こそディラを抱き寄せる そっと寝台に横たわらせて口づけながら 彼の夜着の腰紐を解く ディラは下穿きをつけていなかった どうしてかと問えば そう習ったからだと言う やっぱ後宮怖ぇ……すげぇ…… 一体どれだけ何を教えてるんだ それも座学で 「グリフは何故穿いていたのだ」 「まあ、……嗜み、か」 「そうか」 「ディラはどこも綺麗なのだな」 「……ずっと、大事にしてきたからな」 「ん?」 ディラが綺麗な目でグリフを見つめる ほんの少し誇らしいような顔 「後宮にいる間、ずっと大事にしてきたのだ」 「身体を?」 「そう……手入れをして、傷をつけないように」 「そうか」 「陛下のものだということも、もちろんあったが」 「そうだな」 「グリフに愛される身体だから」 「ディラ……」 彼が後宮に入ったときには すでに陛下の夜伽は行われていなかった それでも義務として仕事として 閨房の諸事を身に付け自分を磨く そんな日常をグリフォードを想いながら過ごしてくれていただなんて 「ずっと」 「ありがとう、ディラ。嬉しいよ」 「愛して、くれるか?」 「もちろんだ。綺麗でかわいい俺のマディーラ」 「待たせて、すまぬ」 「かまわない。俺の所へ来てくれたのだから」 「ああ……」 深く口づけを交わし ディラの腕を夜着から抜かせて寝台の下へ落とす まとわりついていた自分の夜着も放り投げ 何も身につけていない無防備なお互いを触れ合わせると それだけでこころが満たされていく 「グリフ……」 「ん?」 「早く、その」 「ああ」 「グリフの逸物を私の中へ」 ディラの手が再びグリフの息子くんを握る 逸物!? なんだその呼び方は!? グリフは噴き出しそうになるのを懸命に堪えて ディラの髪を撫でる事で誤魔化しながら息を整える 「……ディラ、愛しあうには色々と手順が」 「うむ。心得ている。済ませてあるから、遠慮なく中へ」 「ええ!?」 「え?」 「済ませてって、何を?」 どこまで!? グリフはさすがに混乱してディラの顔をまじまじと見つめた ディラはきょとんとして瞬きを繰り返す 「受け入れるよう、身体は整えている」 「ど……えぇ!?」 「グリフのは……予定よりも大きいから、少し不安はあるが」 「待ってくれ、ディラ。習ったんだな、それも」 「うむ」 「後宮で、座学で、先生に」 「うむ。きちんと頭に入っている。抜かりはない」 「受け入れるって……その、あそこを、そのように?」 「……うむ。ちゃんとしたぞ?」 うろたえるグリフの様子に さすがにディラの表情が曇る 違うんだ、咎めているんじゃない そんなことまでされていると思ってなくて まさか初めてなのにあそこを自分で拡げているのか 「ディラ……見せてくれるか?」 「……見ずとも、入れられるだろう」 「見たいんだ。ディラが俺を受け入れてくれる場所。いいか?」 「……うむ。恥ずかしい、から、あまりじっとは」 「脚を開いて」 躊躇うそぶりを見せるディラの膝を曲げさせて そっと左右に開かせる さっきから漂っている甘い匂いが強くなる ああそうか ディラが仕度に使った香油なのか だからここから香りが立つのだな 「……赤くなっている」 「その、少し疎かにしていて、久しぶりだったから」 「痛くないか?」 「平気だ。だから」 「自分の指で拡げるのか?」 「グリフ、もう……!」 恥ずかしいと言って身体を捩るディラを押さえ込み 仕度が済んでいると言うそこへ指を入れる ディラが小さく声をあげた グリフは息を吐いて指を抜く 「……そうだな、確かに少しは拡がっているな」 「ダメか……?」 「だめだ。このまま入れたら、ディラが痛いだけだ」 「しかし、習った通りに」 「俺と愛しあうのに、何も知らなくていいんだよ、ディラ」 「そういうわけにはいかない」 「俺が全部教えるし、愛があれば何もかも、自然とわかるんだ」 「……そうなのか?」 「愛しあうんだろう、ディラ。夜伽でも奉仕でもない」 「……そんな、つもりは」 「すまない。ひどい事を言ったか……」 グリフは愛しい婚約者を抱き締めた どれほど知識があろうと覚悟をしようと 誰だって最初の夜は不安で怖いものだ 必死にグリフを受け入れようと努めてくれたディラを グリフは本当に愛おしく思った 「愛してる、ディラ。ディラは?」 「愛してる」 「何もしなくていいとは言わない。だけど、ディラだけが何かをする必要はないよ」 「……うむ」 「色々習ったんだな……俺にも教えてくれるか?」 「いいぞ」 「準備も、ディラ。ふたりでしよう。ここは俺が拡げてあげる。俺の指と舌で」 「……そういうのは、習っていない」 「そうか。では、一緒にしような」 「うむ」 「愛してる。愛させてくれ、ディラの全部を」 「うむ」 ディラのそこへ指を入れるよりも先に もっと触れたい部分がある 聞きたい声がある だからふたりでゆっくり愛しあおう

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