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第39話

彼が望むように 自分の望みのままに グリフは結婚の誓いを求めるばかりに マディーラを追い詰めようとしていた自分を恥じた 愛しているから抱くのだ 何かをもらうためじゃない ただ彼が欲しいだけ 花に囲まれて 花よりも美しい婚約者と口づけを交わし ようやくディラは笑顔を見せておかえり、と言った グリフォードは彼を抱き上げて自室へ戻り 控えていた者に目配せをして 寝室まで進んで寝台にマディーラを寝かせる 「グリフ、あの」 「一晩中離さない。朝になっても一緒に」 「それはもちろん嬉しいのだが」 「食事か?後で持ってこさせよう」 「うむ。それも良い考えだ、しかし」 「なんだ」 「その、部屋へ、一度戻りたい」 「……なぜ?」 そんな会話をしている間に グリフは全裸になっていたし マディーラの服もほとんど肌を隠していない この状態でお預けはないよね とりあえず仲直りエッチはしようよ 「じゅ、準備を、その」 「何もかも一緒にしようと、言わなかったか?」 「でも」 「あの後、どこも痛くはなかったか」 「え?……ああ、それは、うむ。大丈夫だった」 「そうか。心配していた」 「グリフはきっととっても上手なのだな」 「いや……まあ……かな……」 色々やってきたもんなぁ そう思えてなんだか後ろめたかったりする ディラはただ感心しているだけのようだ ここは開き直るしかない 「そう、ディラ。俺は多分上手だ。だから準備も俺とした方がいいだろう」 「……うむ」 「上手にするから、させて?」 「……では、そのように」 「ああ」 グリフはディラの白い首筋に唇を寄せた 胸も腹も太ももも 褥でしか曝さないような際どいところも 全部にあとをつけたはずなのにほとんど消えてしまっている 優しく手のひらで肌を辿りながら ディラの唇を柔らかく噛む 「愛してる……ディラ。初めての夜をあんな風にしてすまない」 「うむ……もう、いい」 「浅はかで卑しい下心だった。身体でディラを……そう思ってた」 「来て欲しいと言ったのは私だ。でも、愛して欲しいのだ。私だけを。目の前にいるディラを」 「ああ……いつもディラに教えられる。本当に人を愛する事を」 「そんな事はない」 「ディラは本当に愛情深いな」 「……グリフがそう言ってくれるのなら、嬉しい」 「もっと、俺に教えて。ディラに相応しい男になりたい」 「私が今欲しいものがわかるだろうか?」 「それは、もちろん」 吐息も唾液も囁きも 何もかも混ぜ合わせるように深い口づけ それが今お互いが欲しいもの 音を立てて唇をむさぼりあう 身体が火照って興奮が募る 「ディラが使っているものほど、よい品ではないのだが……」 グリフはそれでも手持ちの中で一番気に入っている瓶を手にして 中身をとろりと直接ディラの肌に落とす 膝を立てて脚を開いたディラの股間に 「ん……」 「ディラの、あの香油は何が入っている?すごくいい香りだったな」 「ん……、あ、花、と」 「そうだろうな。何の花だ?」 「あん……!」 屹立を優しく撫で上げながら グリフはディラの肩の下に反対の腕を差し入れて抱き寄せ 隣に寄り添うようにして囁きかける ディラの肌は上気して 甘い声と荒い息が交互に口から零れている 香油だけではない滑りを借りて グリフの手は徐々に動きを大きく早くする 「だ、め……グリフ、ダメだ、も、離し」 「どうして?」 「まだ、出したくない、のだ」 「そうか」 グリフはディラの性器から手を離すと そのまま袋を優しく握りこんで愛撫する そこと後孔の間をするすると何度も往復しながら撫でると ディラが腕の中で身じろぎをした 「グリフ、ん……」 「夜這いなど、俺たちには必要ないとは思う」 「そうだ。私はもうグリフを愛しているから」 「だが、ディラが俺に全部出せと言ったように、ディラも俺に溺れて欲しいのだ」 「溺れている。もう」 「もっとだ。俺を想っただけで身体が熱くなって、愛して欲しいと思うように」 「そんなの、おかしい」 「おかしくなって、ディラ」 「そんな事になったら、仕事について行くぞ」 「ははは。それはそれで面白いな」 笑い事ではない 顔を顰める愛しい人はグリフに口づけをねだる それに応えながら グリフの指はようやく彼の中に差し込まれた 「うっ……」 「痛いか?」 「……少し。実は、私の香油には……都合のいい成分を加えているのだ」 「え?……ああ。そうだったのか」 「小細工をして、すまぬ」 「そういうのは小細工とは言わない」 「でも、グリフに内緒にしていた」 「そうだな……あれを持ってこさせようか?」 「かまわない。痛いのも、しあわせに思える」 縋るようにグリフにしがみつき ディラは額をグリフの首元にすり寄せる グリフはディラの背中を撫でながら ゆるゆると指を動かす すぐ傍に感じるディラの息遣い 熱くてくらくらする 身体をずらしてディラの胸へ唇を這わせ 突起に舌を当てるとビクンと身体が跳ねた 一瞬腰を浮かせてグリフの指を締めつける 「ん、やっぱり、そこは」 「好きか?」 「……好きだ。だから、もっと」 「ああ」 片腕でディラの背中を抱き もう片方の手は準備に余念がない グリフは空いている唇と舌でディラの好きなところを念入りに可愛がる 舐め取るような勢いで小さな突起を弄り 少し硬くなったそこを強く吸っては歯を立てる そして優しく軽く唇で慰める そんな事を繰り返していたら ディラの膝は戦慄き始め 甘い声でグリフを呼び しがみつく手のひらには汗を感じる 時々跳ねていた腰はすっかり寝台から持ち上がり ゆらゆらと揺らめいてグリフの指を数本咥え込んで震えている 無意識だろうか その動きはまるで身体を繋げている最中のようだ 「ディラ……痛いか?」 「熱い……もどかしい」 「そうか」 「グリフ……入れて、中に」 「ああ」 それはもどかしいだろう グリフの指はただ挿入できるように拡げるためだけに動き この間の夜に知った場所には触れないのだから 焦らしているのではない 指ではなく身体を繋げる快感を それはグリフと愛し合う事でしか得られないということを ディラに知って欲しいのだ 「いいか、ディラ?痛くないから力を抜いて」 「ん……」 「それでいい、目を閉じていて」 グリフの愛撫に蕩けたように ディラは鼻に掛かった甘い返事をして うっとりと目を閉じ脱力している グリフは彼の頬や額にいくつも口づけを落として 彼に覆いかぶさって両足を肩に担ぎ上げると じっくり拡げたそこへ自分の昂ぶりを押し付けた 期待でさっきから先走りが溢れている それさえ潤滑油に代えてゆっくりと根元まで突き入れる 「ああ……!」 ディラの悲鳴は歓喜の声だった 彼の性器からおびただしい量の涎が垂れ落ち 頭頂部を枕に押し付けるように仰け反る 寝台の柵を片手で掴み自分の身体を支えようとする グリフはその手を柵から離させてかぷりと噛みついた 「ディラ……いじわるしないでくれ。俺に、触って」 「あっ……ん、く……!なんだ、か、前より」 「交わるほどに深くなるのだ、悦びは」 「そう、なのか」 「ああ。前よりもいいか?」 「いい……グリフので、もっと、されたい……」 「もっと、どうしたらいい?」 「もっと、よく」 「可愛いディラ……離さないよ」 「早く、グリフ、欲しい……!」 もちろんディラの身体を気遣いながら それでも愛情のままにグリフはディラを抱いた ディラはグリフの逞しい背中や太い腰に手足を回してしがみつき 与えられる刺激と愛情を一つ残らず受け取った

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