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第78話

【番外編】みーたんとスペりん 02 ほんのちょびっとリバを感じさせる描写がございます ◆ 「……!」 灯りも何もつけたままで 簡素な寝台で抱きすくめられる 相手は国王陛下だ いくら愛を囁かれても 押し倒して上に乗っかるわけにもいかないし お召し物を脱がせていいのかさえ躊躇う そんなスペラの心配を他所に ミラはあっという間にスペラの思考を奪った 愛撫と睦言はたまらない甘さで スペラに何もかもを放棄させる 「陛下……!も、う……あ……!」 「名を呼べ。俺は今、王じゃない」 「ミ、ラ、様」 「かわいいスペラ。俺のものになってくれ」 「ミラ様、おねが、も、挿れてくださ……!」 「うん?」 優しいくせに容赦がない それは彼が行う政と同じだ 執拗に乳首を舐められて吸われて ずらされただけの下穿きの隙間から後孔に指を差し込まれて そこからはあられもない音を響かせている そんなスペラをミラは色気の漂う目で見た 「聞かせてくれ、スペラ」 「あ……ミラ様の、……御逸物を、御雫を、頂戴したいのです」 そう言いながら スペラは手をミラの股間へ伸ばそうとして 許されないかもしれないと思いとどまっていた どうすればいいんだろう されるがままに与えられるよりも スペラは自分から積極的に貪る方が好きだ だけど 頭は朦朧として力が入らないし こんなに身分の高い人と愛し合ったことはない ミラはスペラの目を覗きこんで そのまま唇同士を触れ合わせた 「お前はいつも、そうやってねだるのか?」 「いつも……?」 「普通の恋人と寝て、そんな風に控え目なのか」 「あなたは、普通の人ではありません」 「何度も言わせるな。今は王じゃない。だって、王様がこんな所にいたらおかしいだろう?」 どう答えたらいいのか迷う 確かにこんな所に王様がいるのはおかしい だけどどうやって切り替えればいいのか 目立たないような軽装だとはいえ 生地も仕立ても最高の服を着て 爪も髪も手入れが行き届いていて 軍人上がりの癖に穏やかで上品で なんだか妙にいい匂いのするこの男を 今までの恋人たちと同じには考えられない スペラは執拗に続けられる愛撫に身を捩りながら 迷いに迷ってミラの上着の裾を握った 平民が国王のお召し物に手をかけるなど 通常であればその手を切り飛ばされてもおかしくはない 「あなたは、特別です。王でも、王でなくても、陛……ミラ様は私の、特別な」  「お前も俺の、特別な男だ」 「わかりません。どう振舞えば、よろしいですか」 「とりあえず、その話し方を改めろ」 「しかし」 「スペラは、今までの男とも女とも違う。同じような事をするな」 「しかし」 「ミラ、と呼べ。お前が欲しい。もっと、近づいてくれ」 めまいがしそうだった 紛れもなくこの国で最高峰の男に こんな風に求められて こころも身体も勝手に悦んでしまう そう 身体の疼きはもう我慢できないほどだ 「ミ、ラ」 「スペラ。全力で俺を欲しがってくれ……不安にさせるな」 「ん……欲しい、欲しいよ」 「足りない。もっとだ」 「俺を抱いて……突っ込んで、熱いの、ぶちまけて。匂い、つけて」 「どこに」 「ミラの、好きなとこに。そしたら、もう俺から離れられないよ?」 「お前もだろう?」 スペラはミラの頭を抱えるように腕を回し 遠慮なく口づけした 舌が絡まりあった途端に頭の中が痺れる 何これ こんなのヤバイでしょ 荒い息使いはお互い様で スペラは今度こそミラの股間に手を伸ばし 布地越しに忙しなく擦った 口づけの合間にこれ、入れて、と何度も囁く 「脚を開け」 「や……命令……?」 「俺のために開けと、頼んでいる」 「ん、ミラ……奪って」 「無理やり?」 「そう。全力で」 奪われたい あなたに全部あげたい そしたら俺は 今までで一番満足できる 誰かのものになるしあわせをちょうだい 「早く……焦らしすぎだって……!」 「……瞬殺だな、多分」 「そしたら笑ってやるよ」 「そんな余裕、あるのか?」 ミラは自分の服をずらして昂ぶりを取り出し スペラの両足を強引に大きく開かせる スペラの下穿きはもうすっかり濡れていて 硬く脹らんだ彼の性器に張り付いている 薄く透けるそれを見て ミラはいやらしく笑った 「愛している、スペラ」 そう言うと 散々指で焦らして解した後ろの孔に自身を宛がい 一気に根元まで突きいれた 強烈な刺激は背筋を通って脳天まで駆け上り 一瞬後にはスペラは短く大きな声をあげて達した さらにその僅か後に ガクガクと痙攣して下穿きの中に精液を放つ 頭の中が白く溶けていく 「ひ……あ……」 「お前は俺のものだ」 「うぁ……!うああ!あああ……!」 甘く優しくスペラの髪を撫でながら ミラの下半身は力強い律動を繰り返す そのたびにスペラは経験した事のない快感に叫んでいた 下穿きの隙間からドロドロと白濁が垂れ落ちる 「ミラ……ミラ……!も、ヤバイ……!」 「だろうな。俺もだ」 「奥、すき、奥、おく……!ん、あ、ああんっ!」 「出る……ぞ……!」 ミラはその太い腕をスペラの背中に回し 寝台から浮かせるように下半身を抱え上げて 一層激しく腰を打ちつける 繋がったそこに体重が掛かって それでなくとも余りの悦楽に抗うことはできず スペラはただ愛しい男にしがみついて泣いた 気持ちよくて泣くなんて初めてだ 少し怖かった 信じられないほど深くて強い絶頂感は長く続き 身体の震えは止まらず だらしなく開いた口からは唾液と喘ぎが零れ落ちる 自分の身体の中へ侵入を許して どこまでも受け入れて ただ愛されることが嬉しくて溺れそう 同じ行為なのにどうして今までとこんなに違うのか もう絶対に彼に逆らうことはできない 愛している 心底服従させられた こころも身体も この男のものにさせられた こんなしあわせは知らない 「やっぱり王様だなぁ……」 「ん?偉そうか?」 「うん。自覚ないだろ」 「ああ……なおそうか」 「なおるわけないじゃん」 「好かんか?」 「別に」 初めての交合の後 ミラはちゃんとスペラの服も自分の服も全部取り払い 素肌を合わせて愛し合った スペラの身体の隅から隅まで舐め尽くし噛みつき 自分を映す目玉にさえ舌を這わせた スペラはスペラで 絶対の服従と忠誠を誓う男のすべてを確かめて そうすればするほどミラにからめ取られていく自分を心地よく思った 無自覚に無意識に 相手を屈服させてしまう男 それに逆らえない自分 屈辱は己の内面を焼き、歪んだ快感をもたらす たまらない恍惚感だった 絶対的敗北はいっそ清清しいほどだ 「スペラ」 「なんでしょうか」 「今なら聞いてやる。……俺が、好かんか」 「そうですね」 狭い寝台で汗まみれで べたつきながらもお互いを抱き寄せ合う スペラは美しい鳶色の目を覗きこんで 鼻から不遜なため息をひとつ吐き出した 「好きも嫌いもない。私は陛下のものです」 「スペラ」 「今さら、引くのは許さない。私はあなたの足元に蹲ったのですから」 「引くものか」 「では、もう、そのような愚問はお控えいただきたく存じます」 「……愛している」 「そのお言葉も、もう必要ありません」 「なぜ?」 「あなたの愛は、もう頂いたから」 この先何があろうとも ミラ国王陛下のお傍を離れる事はない そこに愛がなくなっても 仮に疎ましがられても 今夜俺は何もかもをあなたに奪われたのだから 自尊心も羞恥心もない すべてを差し出す代わりに愛を貰った その愛はもう誰にも渡さない だからもう俺の腹は決まっている 「俺は一生、スペラに縛られるな」 「……そりゃそうです」 「俺は、お前を盾にしてでも生きると誓った。スペラ」 「はい」 「俺が崩れたら、殺せ」 「お任せください」 「これでもう、何も不安はないな」 ミラは身体を起こす スペラも一緒に起き上がった 「今夜がすべてだ、スペラ。この先何があっても、今夜のことが」 「はい」 「俺は、お前のすべてを貰う。お前には、すべてを預けよう」 「はい」 「傍で、護れ」 「はい」 ほんの少し ミラは辛そうに目を細めた 一緒にいれば辛い事の方が多いだろう それでも放さない お互いがなければ生きていけない 「スペラ」 「はい」 「朝はまだ、遠いぞ」 「確かに」 スペラはミラを押し倒すと その股間に顔を寄せた そしてニヤリと笑う 「使い物に、なりそうにないけど?」 いかに壮健であっても 一晩に激しく交われる回数はそう多くはない ましてやスペラとの歳の差は十を越える 先に尽きても不思議はない それでもこころは相手を求める ミラは自分の両腕を枕にして のん気に息を吐いた 「なんとかしてくれ」 「俺がしようか」 「……ああ。いいぞ。言っておくが俺のソッチは未使用だ。こころして励め」 「いいの?」 「いいよ別に。俺はお前のだから」 スペラは一瞬きょとんとして すぐに、ああそうだったと納得した この強く偉大な人は自分の愛する人なのだと 自分のすべてを愛してくれる人なのだと 「俺、下手だからね」 「じゃあなんでしようとする」 「ミラがこのざまだから」 「面目ないね」 「でも、抱かせてね」 「ああ」 スペラはミラに優しく口づけた 愛しくてたまらない 俺だけの王様 「愛してる」 「お前は言っていいのか」 「俺は何でもありなの」 「おかしくないか」 「みーたん、ちょっと黙ってて」 「みーたん……?」 じゃれあいながらお互いを弄って 二人の最初で最後の夜這いは遂げられた

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