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第79話

【番外編】従者たちの事情 ◆ 私はグリフォード隊長のお屋敷に仕える従者です 以前は軍人として陸軍に所属しておりましたが 戦闘で負傷し退役したところを グリフォード様に拾っていただきました この家にお仕えするのはそのような境遇の者ばかりです 私たち隊長親衛隊……もとい、従者連中は 様々な仕事を与えられます 料理だけは料理人が作り グリフォード様のお部屋付は決まっていますが 他の者は門番や馬番が順に回ってきます お部屋番といってグリフォード様のお部屋付のお手伝いもあります 私たちにとってお部屋付は大変な憧れですが お部屋番もとても嬉しい仕事です 鍛え上げられた逞しい体躯と精悍なお顔立ち 戦績は抜群でおまけに性格も穏やかでお優しい 女性も男性もなく好かれ 是非結婚して欲しいという縁談が後を絶ちません しかしグリフォード様には幼い頃からこころに決めた方がおられるとかで どれほど望まれても縁談をお断りになられます なんと一途であられるのだろうかと 我々はますますご主人様に惚れ込むのでございます そんなグリフォード様は大変愛情深いお方です あまりある愛情を いつ添い遂げられるか知れない離れた許婚様には注ぐこともできず 求められるがままにお与えになることもしばしばです 家の外でのお振る舞いの詳細は知れませんが 時々お知り合いの方を連れて帰宅なされます 男性がほとんどのようですが 軍人とは限らないようです 稀にいかにも愛を売り歩くような風情の人もおられますが どう見てもグリフォード様が慕われておられる様子です まあグリフォード様と褥を共にできるのであれば 金を払ってでもというのが実情でございましょう グリフォード様がお二人以上でご帰宅された夜に お部屋番に当たっている者は大変です グリフォード様のお部屋の一番奥にある寝所 そこから一番遠い間で待機するとはいえ やはりその、静まり返った家の中では 色々と聞こえてしまうものでございます お部屋付の人間は顔色も変えません まるで聞こえていないかのようにしておられます 慣れている、と言ってしまえばそれまででございます しかし我々にとっては千載一遇の絶好機 覗けるものなら覗きたいほどの衝動を必死に抑え込み 漏れ聞こえる声に妄想を逞しくしてしまいます 聞こえてくるのはお相手の声ばかりです 喘ぎ声、泣き声、悲鳴…… どれをとっても淫らで感極まっていて 耳にすれば否応なしに股間が膨らみます グリフォード様、うまそう…… 我々の一致した見解はそれでございます 百発百中でお相手をアンアン言わせヒイヒイ泣かせ 深夜お相手が帰られるときは たいてい馬にも乗れないほど惚けておられます 床上手であるのは確定です 我々従者は お相手の方が、羨ましくてたまらないのでございます そのような情事を幸運にも耳にした者は しばらくの間グリフォード様のお姿を目にしただけで前かがみになります そして仲間に言いふらします 昨晩のグリフォード様は二人を相手にされていた その技巧でもって 二人とも息も絶え絶えになるほど絶叫を繰り返していた いや、この間は そうやってグリフォード様の性豪ぶりに各々思いを馳せるのです ぶっちゃけ抱いて欲しい あの逞しい腕に縋りつきたい 熱い御雫を俺の中に……!!! とまあ、そのように和気藹々と仕えておるのでございます 以前は家の者にもその愛情を与えてくださっていたそうですが 収拾がつかなくなったとかで今は控えておられるようです 本当に非常に残念です そんなグリフォード様の元へ 長年想いを募らせておられた許婚様が嫁いでこられました 名前はマディーラ様 そのお姿は光り輝くほどの美しさで 正確にはお嫁さんに来られたのではなかったのですが グリフォード様の家で暮らし始められました 幼い頃から後宮に入られていたとかで なかなか個性的な発言や習慣が見受けられましたが あの美しいお顔で微笑まれては昇天してしまい 些細なことなどどうでもよく思えてしまうのです 美しさは人をしあわせにします 擦れ違いが多く また、グリフォード様のお優しい性格も手伝って なかなかお二人が愛し合うには至っていないようでした しかしある晩 グリフォード様がマディーラ様のお部屋へ通われ お二人は愛を確かめ合われたようでした が、しかし マディーラ様はご自分の従者に身の回りのお世話をさせておられるために 我々の仲間がその恩恵に預かること罷りならず 悶々とした日々を過ごしておりました やがてお二人の関係は良好となり 割とざっくばらんに、有り体に言えば所構わず グリフォード様はマディーラ様を慈しまれ マディーラ様の白い頬が上気したりするのを我々でさえ目にしてしまうこともありました いいぞ、もっとやれ どんどんやってくれ さすがに本ば……ではなく睦みあわれるのは どちらかの寝所でございます 時々はみだしておいでですが そういうことで我々の役得も復活したわけです 雄雄しく逞しい精悍なグリフォード様と 可憐で花のように美しいマディーラ様の睦みあい 聞こえてくる官能的な声はやはりマディーラ様のものでございます 今まではグリフォード様のお相手に自己投影していた我々も ここに至っては恐れ多くもマディーラ様を愛する立場で妄想してしまいます それほどたまらない声が聞こえてくるのでございます イテイテ、ちんこイテテ そんなことが日常化している我が屋敷で 先日少し変化がありました 例によってお二人は甘い雰囲気で寝所へ入られ 時を待たずしていつも通りマディーラ様の艶声が股間直撃です しれっとした顔のままのお部屋付でさえ ぶつぶつと野菜の名前を呟きながら勃起を鎮めようとしています その時です 「あ……あ、ディラ、あ……!!」 我々はカッと目を見開きました 今のお声は……!! 「だめだ、ディラ……ん、そんなに、あぁ……!」 思わず立ち上がります 勃ち上がってはいます それでも駆けつけて臨場感満載でガン見などできません 思い思いに頭を抱えて煩悶し 気がついたら朝でございました こうして我々は グリフォード様に抱かれたいと願い グリフォード様のように抱きたいと妄想し グリフォード様を抱きたいと狙うようになったのでございます マディーラ様はその後正式にグリフォード様の妻となられました いつまでも睦まじいお二人でいらっしゃることを 我々はこころからお祈り申し上げております

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