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合同⑨
「シノ」
暗闇の中から戻ってこい、というように強く名前を呼ばれ現実に引き戻された俺は声のするほうを振り返った。
「…湯田」
「よく見ろ。徹平さんが着てた制服と似てるけど、ちょっと違う」
そう言われ、じっくり他校の制服を見てみると確かに襟元が違っていた。
そう気づくと、ほっと息をついて心に余裕がもてた。
「ありがとう」
なにも言ってないのに、どうしてそんなに俺の心がわかるのかな、やっぱりエスパーだ。
「もしもシノの前の学校のヤツらだったとしても、シノに近付けさせないから安心しろ」
「……なんか優しいな、ありがとう?」
「シノにだけ優しいの」
「そんなこと言われたら、うざいくらいに甘えてやんぞ」
ま、冗談だけど。
「はは、大歓迎。だけど他のヤツにはやめろよ」
冗談を真に受けられた挙句、最後の言葉を強調して言われてしまった。
「お、おう…」
ま、善処はする。
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