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合同⑩
まじまじと他校の生徒見るけど、知り合いはいなさそう。よかった、本当に俺の前にいた学校じゃないのか。
「ここの学校…」
いつも湯田にベッタリの矢沼が珍しく湯田なんて見向きもせずに他校を凝視している。
「矢沼?」
「あ、シノ〜。シノも探して。シノと同じくらいの身長で黒髪でバカそうなやつ!!」
いやいや、身長はともかく、ほぼ全員黒髪だしバカそうなやつって言われても分かんないよ…
とりあえず他校を、じっと見てみるけどさ。
……おいおい、
「矢沼、なんか他校のヤツ近寄ってきたよ」
「え〜むしろ大歓迎。探しやすくなるじゃん〜」
“大歓迎”ってセリフさっきも聞いた気がするぞ。さすが幼馴染。
近寄ってきた他校のヤツは矢沼を女の子と勘違いしていたらしい。まぁ、かわいいもんな。男子校の花だからな、矢沼。
話しかけてきたヤツに矢沼は何か言っていて、それを聞いたヤツは大勢いる生徒たちへ大声で叫んだ。
「十葉(とわ)ー!!!お前のダチが呼んでんぞー!!!」
なんて大声で呼ばれた“十葉”というヤツは、呼ばれても出てくる気配がなかった。
「ふ〜ん、まぁ素直に出てくるとは思ってないけどね〜」
楽しそうな声で言う矢沼だが口は笑っていても目が笑っていないのは、俺でもわかった。
しかし、“矢沼のおねがい”を他校のヤツらが断れるわけもなく、あっけなく首根っこ掴まれて“十葉”は連れてこられた。
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