121 / 229
意味②
一方、矢沼は始まる前に
「僕が和希を当てたら、僕の学校に編入してきてもらうからね」
と十葉くんと賭けをしていたらしく、矢沼はボールを受け取れば、十葉くんばかり狙っていた。
「ほらほらほら〜避けないで早く当たんなよ、和希〜」
「ひぃっ…!!ちょ、やめ…!!みんな俺を助けろよ!!!!」
必死に誰かの後ろに隠れる十葉くんだったが、他校のヤツらは矢沼に「和希を庇わないでね?」と、“おねがい”され十葉くんはなかなか隠れられていなかった。
だが最後の最後まで十葉くんは矢沼から逃げきっていて、かっこよかった。すごい。
ぜぇはぁ言ってる十葉くんにお疲れ様ーと声をかけると泣きそうな顔して抱きつかれた。
「こ、こわかったぁぁあ!!もう俺、死を覚悟したわ、シノくん〜俺の癒し〜」
「はいはい…あんな冗談の賭けなんて流しておけばいいのに」
編入なんて本気でさせるわけないのに、十葉くん、変なの。
「……シノくんは分かってねぇな、あれは本気だった…俺には分かる!!!!」
そういうものなのか…
「矢沼と同じ学校受験しなかったんだね、十葉くん」
「はぁ!?それは有り得ねぇ、むしろ逃げたの!!蓮のギリギリ受かりそうにない高校に!!あっ、これ蓮には秘密だぜ、シーッ」
なにか深い事情がありそうだ、とりあえずうなづいて二人だけの秘密なってことで約束はした。
ちらりと幼馴染たちを見れば、矢沼は十葉くんを当てられなかったことに「悔しい〜」と地団駄を踏んでいて、湯田は静かに俺を睨んでた。
「十葉くん……そろそろ離してほしい」
「え?あっ、ごめん暑苦しかったよなー!すぐ誰にでも抱きついちまうんだよな、直さなきゃ、ははっ♪」
十葉くん無邪気だな…
俺はもう湯田に怒られたくないからな、ごめんな十葉くん。
ともだちにシェアしよう!