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意味⑦

そう聞き返す前にゴツンと頭にゲンコツをくらったのは、瀬谷。 あらら、声も出ないほど痛いのかな、先生よりも怖いな湯田。 「いってぇ…!」 「お前は油断も隙もないな」 湯田が瀬谷を睨みつけながら俺を起こせば、半泣きの瀬谷が「湯田ばっか、ずりぃ!」と怒鳴っていた。 なにがずるいんだ、ひっつき虫め。 そんな瀬谷をスルーしてメモ帳とシャーペンを持ち湯田を見つめると、ぎゅっと右手を握られた。 え、なに… 「シノ、手冷たい」 「そうかな」 冷え症…ではないと思うけど、暑がりではないな…。 冷たいの、嫌かな。…嫌なら、離してくれるか。 湯田がそのまま俺を引っ張って会議室に連れていこうとするから、俺はそれに身を委ねるようについていった。 「いってきます」 「「いってら〜!!」」 斑のみんなが一斉に笑って、手を振って挨拶してくれるの見て、とても温かい気持ちになった。

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