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湯田②

蓮がシノの頬に手を伸ばし、シノの涙を拭っていた。 ぽろぽろと。瞬きもしていないのに次から次へと雫が溢れる。 …シノが泣いた。 先生とぶつかった程度で泣くヤツではないのは知っている。 俺は見てたから。 さっきの窓の外を見つめるシノも、なにかに胸を苦しめていたシノも、初めて出逢った日から…見てたから。 「ん〜ふふっ、僕と保健室でいけないことしたいの〜?」 ふざけた蓮の声に拳を握る。 蓮なりの励まし方だと分かってはいるが、どこからか独占欲が生まれてくるのを必死に隠していた。 でも、それでも、 シノは泣くから……抱きしめたい、だなんて俺らしくない思いが先行していた。

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