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横溢①
単刀直入に言おう、朝の記憶がない。
記憶が鮮明になりだしたのは、朝ご飯食べてスタンプラリーのスタートラインに立っているあたりから。
瀬谷に聞けば「色気がやばかった…色気が…」しか言わず、話ができる状況ではなかったので、タカちゃんに聞くことにした。
起床時間になっても俺が起きられなかったらしい、湯田のせいだよな、俺は悪くない。
そんで俺は寝ぼけたままで湯田にすりすりして離れないし、湯田も俺を甘やかして離さないしで班のヤツは慌ててたらしい。
遅れたら朝ご飯食べられないもんな、ほんと申し訳ない。
でも結局、湯田が俺を着替えさせて、おんぶして食堂まで連れてってくれて少しだけど食べさせてくれたらしい、ほんと曖昧にしか覚えてないんだけど。恥ずかしい。
湯田の班は矢沼がいたから何とかなったけど、そのせいで班長の湯田は先生に怒られてた。
そんでスタンプラリーで矢沼に会えば、「うわぁ〜シノ首、痛そう〜」と鏡を俺へ向けてくれた。
…えっ、
「なにこれ、蚊かな」
「わお、シノがやっと喋った!てことは目が覚めてるんだね、おはよ〜痒くないの?」
やっとって…高城と瀬谷とはさっき話してるから…失礼な、矢沼。
「おはよー。痒くない………ダニ?…痛 !」
いつの間にか説教の終わった湯田が後ろから頭を叩いてきた。いたい。
「ダニ扱いするな、バカシノ」
「べつに湯田のこと言ってないだろ、バーカ」
そんな俺達を面白そうに見る矢沼は「ふふ〜まぁ古い宿泊所だからシーツにダニはいるかもね〜」なんてフォローしてくれた。
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