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横溢③

スタンプラリーも残り3分の2あたりまできた。 山の頂上近くまでくると漸く半分の地点で、今は下り坂だから、登るより楽だ。 山を下りたら海があって、早く終わったら遊んでいいって先生が言ってたから時間があれば足だけでも浸かりたいなー。 ゴロゴロ… 雷が近くで鳴ってる、気がする。 「今にも降り出しそうだね〜」 なんて、矢沼が脳天気にそんなことを言って数分後、いきなり雨が降り出した。 「うわっ!!やばいな、これ!?雨宿りできるとこあんの!?」 「あそこにバス停があるから、とりあえずあそこまで走れ」 瀬谷とタカちゃんのやりとりを聞いて、俺たちは遠くに見えるバス停まで走った。 降り注ぐ雨の粒が痛いくらいに体中に刺さる。 バス停まで着くが、ゴロゴロと鳴っていた雷が近くでピカッと光り、一瞬自分のところへ落ちてくるのかと怖くなった。 びしょびしょだし… 体操服の裾を両手でぐっと力を込め雨水を絞る。 「しばらく、ここで雨宿りだな」 湯田が、前髪をかきあげながらそう言えば、周りの皆も「そうだな」と留まることを納得していた。 はあ…寒い。 矢沼は珍しく、湯田の声も聞かず顔も見ずに、ただただ空を見上げて何かを考えているようだった。

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