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横溢⑤
「ねぇ君たちの班に和希っていなかったっけ」
湯田を視界から遠ざけ、矢沼がイケメンくんにそう尋ねているのを、ちらりと横で見ていた。
「同じ班。なんだが…アイツ途中で足挫いて、先に行けっつって山頂のところで休んでたんだよな…」
「…バカかよ」
「え?」
「ううん〜♪教えてくれてありがとうね〜」
十葉くん山頂のところにいるのか。1人なのかな、大丈夫なのかな。
「雅貴」
「…」
「昨日の“なんでも言うこと聞く”ってやつ、今から使うね〜」
“班行動を乱すこと、僕が今からすること先生には言わないこと。”
にこりと笑った矢沼には、いつもの可憐さはなかった。
湯田は何も言わなかったけど、それを了承ととったのか矢沼は大雨の中1人、バス停から離れもと来た道を走って戻っていった。
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