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横溢⑦ 矢沼

「…っ、離せ!そういうの嫌だ…っ、矢沼!! !」 「…“蓮”でしょ」 「〜〜っ!!!どっちだっていいだろ!?だって俺たち…」 「黙れ」 “もう別れたんだから” そんな言葉、僕は聞きたくないよ。だから君の唇を僕の唇で塞いでやった。 触れた唇は温かいのに、心が満たされないのはきっと…君を僕のものにできない歯痒さのせいだと、最近すごく思う。 和希から顔を離せば涙目で伏せて僕を見ようとはしなかった。 「和希。僕は“その話”に了承した覚えがないんだよね」 「俺が疲れたの…しんどいの…もう、放っておいて」 あらあら。 「や〜だね、詳しく僕の嫌いなところ教えてくれないと別れられないね」 涙目で赤くなった頬を見る限り、そういうのではなさそうなんだけどね〜 ピカンと近くで雷が光った。 まるで僕らの心の乱れのようだった。  

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