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横溢⑧ 矢沼

何も言ってこない和希が答えを物語っている。 あぁ〜あ、震えちゃって…かわいい。 「和希が僕をいらないっていうなら、僕はもう班のところに戻るね」 なんて、にこりと意地悪なことを口にする。 その言葉にあからさまに「え…」と困惑した瞳で見つめられて、こちらも機嫌が良くなる。 やっと、目が合った。 くっついた体をゆっくりと離し和希に背中を向ければ、くいっと手首を掴まれて心の中でにんまりと笑った。 「ゃ…えっと、また雨の中行くと風邪引くと思う…」 「…だから?」 真顔で僕が聞き返すのと同時に雷がドシンと鳴り響き、思わず和希もびくりと震える。 「そ、側に…一緒に…いてほしい」 今だけでも。…とぽろりと囁いた君の本音に思わず声に出して笑ってしまった。 「はい、素直でよろしい〜」 なんて言って抱き締めれば、今度は抵抗を見せず大人しくしている恋人に愛しさが溢れだした。 雷がこわいって素直に言えれば満点だったんだけどね〜まぁ、君にしては頑張ったほうかな? 雷雨の中、君が小刻みに震えているのを静めるように僕は強く優しく抱きしめていた。

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