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お互い様⑤
下ろされたのは宿泊所のトイレの中。
荷物はもうバスに積まれていたので、そこから新しい体操着を出してトイレまで運ばれた。
「シノは何も分かってない」
「き、着替えるのは分かった!!けど1つのトイレに一緒に入るのは意味わかんない」
「そういうことを言ってるんじゃない」
半ギレの湯田。本当はもっと強く言いたそうな表情をしてるのに、どこか怒りを抑えて俺と接してる。
俺を怖がらせないため、なのかもしれない。
「えっ、あ、や、待って!自分で脱げる!!」
俺の体操服に手を伸ばし、中で俺の身体に這わせる湯田の手を掴み追い出そうと試みれば、その行為を諦め、今度はぎゅっと強く抱き締められた。
お互い湿ったままの体操服で密着してるので、ぐっしょりとしてて冷たい。それなのに、全身が熱い。
「シノのタラシ」
「女の子に囲まれてニヤニヤしてる湯田のほうがタラシだ」
「ニヤついてない。誰にでも優しさ振り撒いてるシノと一緒にするな」
俺は違う、と。いつにも増して熱くなってる湯田がなんだかおかしくって小さく笑う。
そんな必死になって言うことだろうか。
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