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お互い様⑥
湯田みたいに必死になれたら。必死に手を伸ばせてたら。なにか違ってたのかな。
湯田の考えがすべて理解できたら、湯田を怒らせずに済むのになーバカな俺とこうして一緒にいてくれるのも、ありがたいことなんだけど。
とりあえず…
「っくしゅん」
…寒い。
俺の盛大なまでのくしゃみに、かくんと肩を落とし「空気読まないよなお前」と睨まれた。
え、だってハグしてたって服濡れたままじゃ寒いに決まってるじゃん?
「まーこの話は置いといて。帰りのバスに遅れちゃうから、とっとと着替えよ、な?」
「……わかった」
うん、全然顔が「わかってない」って顔してるけど気にしない。つっこんだら、またケンカしてしまいそうだし。
俺バカだから、湯田のこと怒らせてばっかだし。
うんうん、と1人納得して着替えるためにポンポン服を脱いでたら「羞恥心なさすぎ」と頭を叩かれた。
あぁーあ…かっこいい顔にまた眉間に皺が寄っちゃった…
ほらね。
俺は湯田を怒らせてばかりだ。
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