171 / 229
平行④
「俺は鮮明に覚えてる、忘れられない…忘れたくない」
忘れたい忘れたい忘れられない忘れたい
「先輩…ごめんなさい俺、」
苦しい。
伝えるつもりなんてなかった。
想いを通わせたいなんて思ってなかった。
応えてほしいなんて、思ってなかった。
…はずなのに、どこかで望んでしまっていたのかもしれない。
あぁ…なんて、バカなんだろう。
「俺はな、巳継」
「ごめんなさ…」
「嬉しかったんだよ」
「ごめ……え、」
予想外の言葉に俯いてた顔をゆっくり先輩に向けてしまっていた。
そこにはいつものつり目が、目を細めることにより少し和らいで八重歯がちらりと見えて少し幼さが残る俺の大好きな笑顔があった。
ともだちにシェアしよう!