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平行⑤
ぽかんと口を開けたまま固まる俺にくすりと笑いながら言葉を続ける。
「巳継に好きだって言われて嬉しかった」
「嘘…そんなわけない、です」
「いやいや、ほんと。素直に嬉しかったよ」
なんだこの予想だにしなかった展開は…。
「ははっ、まぬけな顔。ほんとに覚えてないんだなーお前…。あの時、俺は」
「…っ」
先の言葉が知りたい、だなんて傲慢だろうか。うずうずと塞ぎたかったはずの耳を傾け始める。
「……ところで湯田ってヤツと付き合ってないって答えてたけどさー」
「せ、先輩!?話を逸らさないでくださいよ!」
自分でも驚くくらい大声で突っ込んでしまった。
だって嬉しいじゃないか。
軽蔑されていたと思っていた先輩から、あの想いを否定せず『嬉しかった』と伝えてくれるだなんて。
もう、それだけで救われたと思うんだ。
たとえそれが先輩の優しさだったとしても、その言葉だけで、こんなにも心が軽くなったんだから。
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