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平行⑦

それから緊張の糸が切れてしまって、話は予想以上に弾んだ。 陸上部の話。男子校の話。俺の弟の話。 「弟モテるよなーこの前二人の女子がどっちが先に告白するかって揉め出してさ。終いには弟、左右の手を捕まれて引っ張られてたな」 なんだそれ。羨ましいな、観月。 先輩は悪くないのに先輩を睨みながらアイスコーヒーをすする。もう氷溶けてぬるいな。 「校舎違うのに観月ってそんな目立ってるんですか?」 「あー俺の学年の女子が絡んでたから渡り廊下で揉めてたな。目立ってたっちゃ目立ってたぞ」 「…恥ずかしいヤツめ」 兄として情けないぞ…穏便に事を済ませろ…本気で編入して良かったとか思えてきた。 「それでさ弟なんて言ったと思う?」 「?… "穏便にいきましょう"?」 「ははっ、それ弟に言ってやれよ!アイツ"離してもらえます?このまま引っ張られて真っ二つにされるの嫌なので二人ともお断りします"だって。断る理由が独特だよな」 「最低だ」 「え、そういう所、巳継に似てると思ったんだけどな(笑)!」 どこがですか。家帰ったら、観月の嫌いな麻婆茄子にしてやる、きっ!

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