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耽溺⑩

「湯田」 「ん」 「…ごめんな」 「日曜のこと?もういい、怒るのも疲れた」 それどころじゃない、と湯田は後ろから優しく抱き留め日曜日のことを許してくれる。 それだけの謝罪じゃなかったけれど、口にする気はなかった。 「あっ!シノちゃん寝てる!!」 半分夢の中にいたのに、瀬谷の大声にゆっくり瞼を開く。 さきほどまでは数人しかいなかった教室には大半の生徒が着替え終わり古典の準備をしていた。 瀬谷の隣にはタカちゃんもいて「プールのあとは眠いよな」って俺へ向けて苦笑していた。 そんな悪意のないタカちゃんを湯田は毛嫌いしているみたいで俺へ話す声のトーンより低くなる。 「触るなよ」 「えっ、…ああ!触らん触らん!!ていうか、プールのアレも不可抗力だからな?瀬谷のイタズラで溺れそうだったから…!」 タカちゃんの焦った声は珍しい。いつも大人っぽくて頼りになるヒーローなのに。 そんなタカちゃんの主張に瀬谷は納得がいかなかったのだろう、むっとすねた表情を見せ反発したが 「俺のせいって言いたいのかよ!?」 「「そうだ」」 タカちゃんと湯田のハモりにシュン…と縮こまり何も言えなくなっていた。 ふわあ…、ねむい。

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