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耽溺⑨

「湯田は日曜…何してた?」 「…映画見てコーヒー飲んでたらシノが来たんだろ?」 間名くん、すごく楽しそうにしてたな…なんて今さら思い出して、やっぱりあれは妨害したようなものだったのかもなっと反省はする。 「湯田が矢沼以外といるの、なんか新鮮だった」 想像以上に堪えるものだよな。 「俺のは腹いせのようなものだから」 「腹いせ…?」 密着した身体を離しじっと湯田を見つめる。湯田の瞳の奥に困惑する自分が映っていた。 「一人で行かせたら、もう戻ってこないと思ったから。そう思ってるのに何もできなかった自分に苛ついてた」 けど、お前はこうしてここにいる、と言われ小さく笑う。 居場所なんて、ここしかないというなのに…変なの。 「湯田、なに言ってるのか分かんない」 「徹平さんとうまくいくと思ってたってこと」 なら、もっと意味がわからないや。 「初恋は叶わないっていうしな」 「…徹平さん、嬉しかったしか言わなかったのか?」 「あとは学校の話と俺の家族の話と…ん」 そこまで言うと目を覆うように湯田の右手が伸びてきて視界を塞がれたと同時に、再び湯田の胸の中へと誘導された。 「もう黙ってろ」と話が反れ出したところで呆れたようにそんなことを言われ、素直に黙って瞳を閉じた。

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