197 / 229

遊戯④

見上げれば、天空で舞うモノからは延々と叫び声が響き渡っていた。 ーー…遊園地に行きたいと言ったのは、矢沼だったそうだ。 矢沼(おまえ)と行きたいところなんてない、と十葉くんが言い放ったみたいで「それなら僕が決めてもいいよね」と矢沼は言ったらしい。そのとき矢沼は傷ついた様子もなくずっと笑っていたんだとか。 それで今が… 「ぎ、ギャアアアアー!!!!!」 こういう状況になっている。 「うっせぇな、十葉のヤツ」 「うん、同感」 湯田と二人でジュース飲みながら、ジェットコースターに乗っている十葉くんの叫び声に苦笑していた。 他にも可愛い女の子が叫んでるはずなのに、十葉くんの野太い声が掻き消してる。 そんな十葉くんの隣で「あはははははっ」と万歳して余裕そうにこちらにピースまでする矢沼が逆に怖い。 矢沼が十葉くんと手を繋いで万歳しようとするも、十葉くんはそれどころではないと持ち手から手が離せないって感じで下を向いてる、あぁーわかる、こわそうだ… 降りてきた十葉くんは涙と鼻水でぐしょぐしょだったのは言うまでもない。 …泣きながら俺に抱きついてきたんだけど。 「アトラクション、だめなの十葉くん?」 「たっ……高いところ…ちょっと、苦手…っ」 それでも乗ったのか、十葉くん。

ともだちにシェアしよう!