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遊戯⑫

「はい、これ」 そんな俺たちには見向きもせずに矢沼が十葉くんへ渡したそれに十葉くん自身が目を丸くする。 「これ…」 「炭酸。あ、ラズベリー味っていう珍しいのがあってね~、甘酸っぱい感じの和希好きでしょ?僕もそういうの好きだからお揃いで買ってきた」 飲みたかったでしょ?と得意気に笑う矢沼は確信犯だと思う。 それに対して「…なんで、」と言葉を失う十葉くんへ矢沼はまた、微笑むのだ。 「ジェットコースター好きじゃないのに僕のために2回も乗ってくれたからね。そのお礼」 ありがとう、と笑った矢沼の顔を俺は初めて見たかもしれない。俺にも、湯田にも見せたことのないその慈愛に満ちた表情を他のだれでもない十葉くんへ向けていることに、本人は気づいているのだろうか。 「……、ほんと敵わない」 「ん~?」 飲み物を受け取った十葉くんは俯いて、顔を見られないように手で目を覆った。 「俺にとって蓮は…昔も今も、かっこいい」 「……そんなこと言うの和希くらいだよ。僕に"かっこいい"なんて言うのは」 そう言って、十葉くんの言葉に照れ隠しながらも嬉しそうに返していた。

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