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琴線①

それから十葉くんと矢沼の間に流れていた不穏な空気は嘘のように消えた。 それでも矢沼とは一歩引いている十葉くんだったが、さっきまでの刺々しさはなかった。むしろ、問題は矢沼のほうで十葉くんが逃避のために俺のところへやってくると矢沼の視線が痛かった。 「可愛い矢沼でいて…」 切実に。 「ふふ~なにシノ~、今の僕は可愛くないって言いたいの?」 「滅相もない。プリティプリティ」 じゅーっとジュース飲みながら返せば、湯田から「棒読みだなシノ」と突っ込まれ湯田の足を踏む。 余計なこと言わなくていい。 そんなこんなで俺たちはお化け屋敷で騒いだり、他の乗り物に乗ったり遊園地を満喫していった。 日が沈んできたところで矢沼が「アレに乗りたい」と指差したのは観覧車で十葉くんが青い顔でげんなりとなっていた。 「れ…蓮、俺待ってるから3人で乗ってきたら?」 「は?和希も乗るに決まってるでしょ」 「はい…」 十葉くんの意見はきれいに矢沼が一掃する。 男4人で観覧車乗るのもどうなんだ……と、思ってしまったが二人の会話に割り込んでまで言う勇気は俺にはなかった。

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