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琴線③

そんな矢沼を見て固まっていた俺に、湯田が「ついでに俺らも乗るか」と観覧車へ誘導してくる。 べつに乗りたいものは、ほとんど乗り尽くしたしお腹も満たされている。 特にやりたいことはないので、それを断る理由はなかった。 こくりと頷き観覧車へ駆け込めば、俺の真正面に湯田はゆっくり腰掛けた。 ああ…なんだろ、さっきまでみんなでわいわいしていたから急に二人になり静寂に包まれるこの空間に妙な緊張感が生まれる。 「矢沼って…十葉くんのことになると笑い方違うのな」 学校での矢沼はほんとうに中性的というかむしろ女の子のような顔立ちなのもあるが、可愛らしい笑顔で、みんなを魅惑するのに。 「あれを笑ってると捉えていいのかは分からんが、余裕がないのは伝わる」 「余裕?」 「そんなに大事ならいじめなきゃいいのに。十葉も大変だな」 過去にあったことの大半は蓮が悪いから、自業自得なんだけど、とぼやく湯田に首を傾げる。 複雑なんだな、二人。 そんな俺へ「ちなみに」と湯田は言葉を続けた。 「俺もお前に対して余裕はない」 「ん?あー、えーと…なにに?」 ほぼ十葉くんと矢沼のこと考えて、トリップしてたわ。 「はいはい、それがシノだよ」 呆れないで、ごめんってば。

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