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楽園⑦
それでも「分かんなくていいよ」と言って矢沼からはさっきとは違う柔らかい雰囲気が流れてるのを感じて小さく笑う。
「…湯田がいいって言ったら文化祭、いく」
「断りはしないでしょ~。あ、僕も和希誘ってみよ~と」
今閃いた、という顔で十葉くんにメッセージ送り出した矢沼は気分屋だなーと思うと同時にその表情はころころと変わって可愛らしい印象が強くなる。
先生がやってきて授業が始まっても、矢沼は足をぶんぶん振って浮かれた気持ちが仕草にまで表れていて、十葉くんからの返事がよかったのかな、よかったねって背中見つめながら微笑した。
文化祭いくって言ったら観月どんな反応するかなー、来んなって言われたら兄ちゃん泣いちゃいそう…。
湯田を間接的に知ってる弟だが、湯田はほとんど知らないだろう。会ったら紹介したいなー、かわいい弟自慢して。詳しくかっこいい湯田、自慢したい。
……って、なんて言う気だ、俺。今の勢いで"恋人"って言ってしまいそうだったわバカ、シミュレーションして良かった良かった。
ここにしか…俺の楽園 はないというのに。
この楽園 ですら、俺の告白で危うく脆いものになってしまうと分かっている。
…あぁーあ、
「…"行くな"って言えばよかった」
湯田さえいれば、俺きっと何もいらないのに。
授業が始まっても戻らない湯田を考えながら、そんなことを、より強く想った。
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