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憧憬①

国語の時間は眠たくて仕方ない。 現代文はカタカナがやたら多いし古典は現代の言葉じゃないし…あぁー眠い。 前の席の矢沼も眠いのか肘を机について頭がかくかくなっている。 すごく気になる。 肘を踏み外して倒れないか心配だ。 ちらちらと前の方の他のヤツも矢沼を見ているが、寝顔見てんの?寝顔可愛いのかな、俺も見たいーけれど、俺から見えるのは背中だぜ、くそぅ。 隣もあれからずっと寝てるもんなー。 こんなに寝てるヤツがいたら、逆に寝られないってのは俺だけかな。 ざわざわ、と。運動場から声が聞こえる。 窓側の席の俺は外へ目を向けた。 体力測定をしてるのか二人ずつ50mを走っている。 中学の頃は女子がいたからか知らないけど、高校はみんなテキパキしてんのな。 男子は女子をガン見してるし、女子は男子に見られて恥ずかしいってなかなか走らなかったイメージだわ。 ……あ、あの人、速… フォームが定まってないから走る専門ではなさそう。サッカーとかかな、もっと膝を上げて背筋少し伸ばすだけで今よりもっと速くなると思うんだよな……

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