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憧憬②

…あ。こっちに顔が向いた。 友達と話してるのか体操服をぱたぱたさせて笑ってる。顔は………あぁーだめだ、見えない。乱視だからな俺、くそぅ。 でも、はしゃいでいるのか友達と蹴りあったり抱き合ったりガッツポーズしたりと仕草だけ見えて、 「違う」と思った。 もっと爽やかで落ち着いてるくせに笑うと八重歯が見えて猫の目のようにつり目で…幼く見えて… いや、あれは中学の頃だから今はどうかな。幼いなんて不釣り合いかもしれない。 ……待って。 「違う」 運動場へ向けていた視線を机に向けてシャーペンを持ったままの左手で前髪をくしゃりとした。 違う。 俺は運動場の男子を見ていただけで、 先輩は全く関係ないじゃないか。 バカ。

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