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憧憬④

振り向いてそう言った矢沼は目を丸くさせて、手を伸ばしてきた。 …なに。 「そんなに痛かったの?先生の顎は凶器なんだね〜メモメモ」 泣き止んで?と言われて初めて自分が頬を伝うほどの涙を流していることを知った。 あぁ…だめ、気付いた瞬間もっと涙が止まんなくなってきた。 「矢沼…慰めて」 「ん〜ふふっ、僕と保健室でいけないことしたいの〜?」 矢沼がへらへらと俺を誘惑する。だけど声からして、本気じゃないことは分かってる。 いけないこと…って、どこまでなのかな。 キス?それ以上? いや、違うでしょ。 この好きだった気持ちすら、いけないことだったじゃないか。バカ。 「……ごめんねシノ、冗談冗談!!泣き止んで〜痛いの痛いのとんでけ〜!!!」 俺に冗談が通じてないと思ったのか慌てて弁解した矢沼は、俺の涙を拭ってくれたり頭をよしよししてくれた。 あぁー……こんなに矢沼に優しくされてたら他のヤツに後でしめられそう。

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