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餌付け④

なんとか湯田もパンを食べ終えて、俺はトイレへ行きたくなって席を外した。 矢沼も「あっ!僕、裏庭に呼び出されてたんだ〜」とぴょこぴょこ途中まで着いてきた。 大丈夫か、矢沼? 呼び出しって、告白…だよな? 矢沼は俺よりも背が低いし華奢だし、押し倒されたら逃げられない。 「ついていこうか?」と俺が心配すると「大丈夫だよ、ありがとう」と笑顔で手を振って走り去ってしまった。 ん〜大丈夫ならいいのだけど。 湯田に相談してみよ。 トイレを済ませて教室に戻ってくると、まだ俺の席に座ってる湯田。 …そこ、俺の席なんだけど。 本気で睨んで黙って湯田へ圧をかけたのに、俺の顔を見た湯田は手を伸ばしてきた。 「…なに」 「ハグ。さっきもしただろ?」 「やだよ、なに真顔で言ってんの」 イケメンだからって騙されないし。 …まぁ、手の届かないところに俺は立ってるから捕まらないけどな、へへーんだっ!! あ、そうだ。 「湯田!矢沼、呼び出されたんだけど大丈夫なのかな」 「蓮?大丈夫だろ」 「幼なじみだろ?あんな可愛いヤツ襲われるに決まってんじゃん!心配じゃねーの?」 「蓮は強いからな……ほら」 俺の後ろに目を向けた湯田に、俺も後ろを振り向く。 そこには、笑顔でひらひら手を振る矢沼が立っていた。

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