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餌付け⑥
身体をひねっても腰に回された腕を解こうとしても逃げられなくて涙目になる。
…嘘だろ…力負けしてんだけど。
「〜〜っ、もう離せってば!!!」
「嫌」
午前中ずっと、あんな体勢だったから身体固まってんだぞ、こっちの身にもなれよなバカ!
「湯田うざい」
「…」
ふんっ、と湯田の顔も見ずに、思ったことをまんま口から零した。
その瞬間、湯田ではなく矢沼が涙を溜めて笑いだしたから驚いた。
「あはははっ!!“うざい”って…っ、雅貴にそんなこと言うのシノだけだよ?くっ…ははははっ……っいたぁ!」
なんで矢沼がそこまで笑うのか分かんない。だってフツーにうざくない?早く離せよって感じ。
お腹を抱えて笑う矢沼のおでこにパコーンと消しゴムが当たり矢沼は尻餅をついてしまった。
それを投げたのは湯田だって分かるけどさ…分かるけど…
「俺の消しゴム!!」
買ってもらったばっかのやつなんだけど!!壊れるようなものじゃないけどさ!人の物を投げるなんてひどい!悪魔だ悪魔!
俺の叫びは完全無視で湯田は俺を足の上から退かして立ち上がると矢沼を睨みつけていた。
…こわ。
「もうっ!消しゴム投げなくて良いじゃんか〜見てよっ!おでこ赤くなった、いたい〜」
涙目の矢沼に俺も他のクラスメイトも息を呑むのに、表情1つ変えない湯田はさすがって感じ。
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