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相似⑧
靴紐を結び直しながら今は俺より低い位置に顔がある湯田が俺を見上げてそう言った。
いつもと表情は変えないけれど、俺の目を見て言われて…真剣な眼差しに少しばかり驚いた。
「俺も遅いからやだね!それに俺はタカちゃんと走るから」
さっき約束したからな。
得意げに答えると、足の脛を蹴られた。痛い。
結局、湯田と矢沼はお互い違う相手とペアを見つけて走ることにしたらしい。
幼なじみなのに、なんでだろ。意味わかんない。
「タカちゃん、ハンドボール投げではかっこ悪いところ見せちゃったけど走るのは負けねーからな!」
腕を上げて力こぶを作りながら宣言する。まぁ、俺も華奢な部類だから力こぶなんてないのだけど。
スタートラインに立ってタカちゃんに目を向けると、手で口元を隠して俯いていた。
「……キツイ」
「タカちゃん?」
「…あ、篠川のせいじゃない!そうじゃなくて…はぁ、篠川あとで湯田に何かしてやれよ?」
何か、って何だし。
チラリと湯田を見たけど俺なんて見てないし。
むしろタカちゃん見てるぞ?なに、もしかして湯田はタカちゃんと走りたかったのか?
タカちゃんは速そうだもんな…競争しがいがある。
だがしかし!!
「タカちゃんは譲らねえ!」
「えっ、あ、篠川…っ、抱きつかないで、その、俺が睨まれてるって気付いて…!!!」
そんなの知るか。
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