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相似⑫
湯田は不良っぽいのに香水とかつけてないからかな。洗剤の匂いがして好き。
すんすん、と袖に鼻を近付けて嗅いでると「なに?」と尋ねられた。尋ねた湯田は俺の腰に手をまわして横を歩いてる。
「湯田のにおい落ち着くから好きだ」
「俺もシノのにおい好き」
「お、まじか。なんかお母さんの匂いって感じだよな」
なんか家庭的な匂い!洗剤だからかな?でも、そんな感じ。
へらっと笑って言った俺に、湯田は俺の頬をつねってきた。
「シノのそういう所、腹立つな」
「いひゃい、いひゃい!」
目が据わってる…!!
「まぁまぁ…篠川が痛がってるからそれくらいにしてやれって…」
えーん、タカちゃんー。
「うるさい。…高城、次走る相手いないなら俺と走れ」
「俺?」
頬をつねる手が離され頭を優しく撫でてくれるようになって、俺は安堵した。
それにタカちゃんと湯田が走れば、俺は客観的に走りを見てられるし。やったぜ。
「俺みてる!!応援してる!!」
湯田の走りは見損ねたから一石二鳥だ。
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