35 / 229

相似⑫

湯田は不良っぽいのに香水とかつけてないからかな。洗剤の匂いがして好き。 すんすん、と袖に鼻を近付けて嗅いでると「なに?」と尋ねられた。尋ねた湯田は俺の腰に手をまわして横を歩いてる。 「湯田のにおい落ち着くから好きだ」 「俺もシノのにおい好き」 「お、まじか。なんかお母さんの匂いって感じだよな」 なんか家庭的な匂い!洗剤だからかな?でも、そんな感じ。 へらっと笑って言った俺に、湯田は俺の頬をつねってきた。 「シノのそういう所、腹立つな」 「いひゃい、いひゃい!」 目が据わってる…!! 「まぁまぁ…篠川が痛がってるからそれくらいにしてやれって…」 えーん、タカちゃんー。 「うるさい。…高城、次走る相手いないなら俺と走れ」 「俺?」 頬をつねる手が離され頭を優しく撫でてくれるようになって、俺は安堵した。 それにタカちゃんと湯田が走れば、俺は客観的に走りを見てられるし。やったぜ。 「俺みてる!!応援してる!!」 湯田の走りは見損ねたから一石二鳥だ。

ともだちにシェアしよう!