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相似⑬
矢沼も二人が走ると聞いて俺の隣へやってきて観戦しにきた。
「がんばれタカちゃ〜ん、雅貴〜」
手を大きく振ってスタートラインにいる二人に歓声を上げる。
そして、スタートのコールで一斉に走り出した二人。
…え、
「おい、湯田のヤツ速くね?」
「え、もしかして俺と走った時、手ぇ抜かれた…?」
ざわざわとクラスメイトがいろんな声を上げる。
「がんばれ〜タカちゃん負けるなぁ〜」と矢沼の叫びも聞こえる。
俺の瞳に映る彼は
胸を張って、前だけを見据えて走っていた。
ドクドクと走っていないくせに動悸がする。
ああ…もう、
「…苦しい」
左手で心臓あたりを押さえて、この高鳴りの原因を押し込めようと必死になって、感情を無にした。
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