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面影①
体育が終わり、帰りのホームルームが行われる。
しかし、教室に入ると先生に「お前は倉庫の掃除だろ?」と教室から追い出された。
その代わりホームルームは受けなくていいらしい。ラッキー。
「あ、ジャージ」
未だに着ている湯田のジャージに目を向ける。
そのまま返すのも悪いし、洗って返すか。砂で汚れてるだろうしな、うん。
とりあえずー…床の砂とかをホウキで外に出せばいいかな。
隅の方に置いてあるホウキを手に取り、せっせとやってしまう。
はくときに邪魔だなっと思った荷物は、一回外に出してホウキを動かす。
お、雑巾はっけーん。
窓とか拭けばいいのか?汚いか。棚でも拭こーと。
「〜♪」
両親は共働きだから両親がいないときは俺が家事をする。中学の弟がいるけれど、やっぱり俺がお兄ちゃんだからな、俺が積極的にやっているほう。
綺麗好きってわけではないから、汚くなったな〜て思った時にちまちまと掃除するって感じ。
「お前は何でもできるよな」と言って、えらいえらいと頭をぽんぽん撫でられ褒められたこともあるけど、何でもできるわけじゃない。
それなのに、俺が鈍くさくてもバカでも笑って許してくれるし助けてくれたんだ、先輩は。
そんな優しさ知りたくはなかった。こんな想いを抱くくらいなら。
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