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面影⑥

ガコンッと。何かが凹みそうな鈍い音がした。 扉の方から聞こえるけれど、先輩の顔が邪魔で見えないや。 「ん…」 やっと自分の意思で起き上がることを選んだ俺なのだが、倉庫の壁……へこんでませんよね??? コンクリートではなくても、へこむほどヤワな壁じゃないはず。けれど、それくらいの音がしたんだけど。こわ。誰だし。 先輩は背後での出来事なので、俺より驚いて相手を見ていた。 鋭い瞳を隠すように赤茶の髪がさらりと、揺れた。 「湯田」 ホームルーム終わったのか、早いな。

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