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面影⑦

「シノ」 名前を呼ばれて、ハテナマークが浮かぶ。 え、なんか怖い。 いつもより低い声で呼ばれてる。…なんで? 「…なに」 「俺のジャージ汚すな、バカシノ」 「……あぁー!!!」 バッとジャージ見ると転けたこともあり、砂がついて茶色く汚れている。 「…ごめん、洗って返すから…」 殴んないで。 「…ったく。先生がシノのこと呼んでたぞ。倉庫はいいから雑用頼むって」 あ、そっか。 倉庫の掃除と雑用を頼まれてたんだった。すっかり忘れてた。 あぁ…背中がまだ痛い。 上半身は起こすものの、未だに俺に乗っている先輩が邪魔でそれ以上は動けずにいると、湯田が 「そろそろ退いてやってもらえませんか」 と俺の手をとりながら先輩に言っていた。 その時の湯田の顔は見てないけれど、その声も低くてちょっと怖かった。 起き上がらされて、湯田を見上げるとまだ怒っていそうだった。 え、どうしよ…どうしよ… 「…殴んないで」 とりあえず、痛いのは嫌だから湯田にお願いしてみる。 「殴らないっつの。バカか」 呆れたように笑って頭をぽんぽんされて、安堵する。 よかった…湯田を怒らせたら怖いもんな、気を付けよう、うん。 振り返ると先輩と目があったので、へらりと笑ってお礼を言った。 「先輩、ありがとうございました」 俺の後頭部が無事だったのは先輩のおかげだからな!助かった。 それを見て、湯田は殴りはしなかったけど、俺の頬をつねって教室まで連れて行こうとするから鬼畜だ。 痛いのは嫌いなのに。バカ。

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