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印①
つねられた頬を擦りながら廊下をとぼとぼ歩いて教室に着くと、もう誰もいなかった。
「矢沼は?」
「帰った」
淡々と答える湯田には先程の冷酷さは感じられなかった。
とりあえず湯田のジャージ脱いでー半ズボン脱いでー服も脱いでー
「おい」
「ん?なにー?」
「そのパンツ一丁になる着替え方やめろ」
「…なんでさ」
「目のやり場に困る」
えー、そんなもんー?
中学の時からこの着替え方で何も言われたことないんだけど。
でも確かに見たくないもの見せられるのって、精神的に苦痛なのかもな。
とりあえず「わかった」と言って今後は気を付けるか、と軽く誓う。
空が茜色に染まり、教室にまでその光が及ぶ。俺と湯田しかいない教室は俺達の話し声を除けば、しんとしていた。
そんな時、ズボンを穿いていたら後ろから湯田が抱きしめてきて
そこまでなら、いつものことか…と驚きはしなかったのだが肩をガブッと噛まれてビクリと震えた。
「うわっ!…ぇ、なに」
「背中、赤い」
あぁー、多分さっき倉庫で背中打ったからからかな…
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