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彼女②
「おはよ〜。シノが遅刻って珍しいね」
1限目が終わった瞬間くるりと振り返った矢沼が、首を傾げてどうしたの、と顔が訴えている。
「最近眠れないんだよね…」
「えっ、なんでなんで!もしかして1ヶ月後に控えた中間テストの勉強!?」
あぁー…そんなものがあったのか。
「まぁ、そんなとこ。授業スピード早いし」
なんて、誤魔化せば簡単に矢沼は信じて「ふーん」と笑ってくれるから、胸を撫で下ろし俺は小さく笑う。うんうん、そういうところも可愛いよね。
「シノって中学どこ?僕はR中だったんだけど、そこと授業スピード変わんないような気がする」
「…K中」
「……えっ、K中ってあの!?中高一貫校の!?あそこ頭良いよね!?シノなんでこっち来たの」
「んー…ほんとバカだったんだって俺…」
先輩と出逢ってから、授業の内容が頭に入ってこなかったのは事実。いつも、先輩のことばかり考えていたから。
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