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彼女④
そう言うと、さっきまで泣きそうな顔だった矢沼の顔がパァアと花が咲いたような笑顔に変わる。
「ほんと!?わ〜い!ふふっ、きっと雅貴喜ぶだろうな〜ふふ」
なんか…ちょっと、小悪魔な笑顔にも見えてきた。
とりあえずスマホを受け取り着信履歴から湯田へ電話をかける。
電話をかけはじめると矢沼が何やらノートに書き始めていて、なんだろ…とのぞき込んだ瞬間ガチャと繋がった音がした。
「あ、湯―――」
『うざい。いいかげんにしろ、電話かけてくんな!』
かなりお怒りのようだ…
こんな湯田とも普通に話してた矢沼が凄いんだけど。
「…ごめん」
『……え、もしかしてシノ?』
「えっと、うん…おは、よ」
『…』
なんか俺の知らない湯田と話してる気がして、おどおどしながらも挨拶してみる。
しかし、あっちが完全に黙っちゃって俺もなんて言っていいのか分からない。
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