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彼女⑤

そんな時、矢沼がちょんちょんと俺の肩を叩いてノートを見せてきた。 ノートに書いてあることを湯田に言え、ってことらしい。 「えぇ…と、“湯田が学校来ないと、寂しい”」 『…寂しいの?』 「うん」 矢沼のノートに書いてあるし、とりあえず返事はする。 「“湯田に会いたい…”……!?」 会いたい、の続きに大好きだよっと書いていて一気に動揺してしまった。 しかも大好きだよなんて言えなくて、うぅぅ…と項垂れる。 するとガタッと立ち上がる音なのか物を置いた音なのかわからない音が聞こえたあと 『今から行く、待っててシノ』 と、優しい声が聞こえた。 ふわっと胸が軽い気持ちになる。怒った低い声は怖いけれど、優しい声の湯田は好きだ。 しかし、湯田じゃない高めの声が「え、どっか行くの?」と問いかけているのが聞こえ、小さく笑った。 「待ってる、湯田」 それだけ言って電話を切った。

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