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逃げられない⑧
「シノ〜?」
先を行く矢沼が振り返り俺を呼ぶ。だけど、今はファミレスへ向かって勉強してる場合じゃない。
ごめん、矢沼…湯田…。
「…っ」
矢沼の俺を呼ぶ声に“先輩”が気を逸らした隙に、矢沼たちがいる方とは逆方向へ向かって走り出した。
だって……この人と何を話せばいいのか分かんないし。
終わったことだし。
忘れたいし。
スタートダッシュ決めたくせに、やっぱりあっちは陸上部だから…俺の憧れた走りを今も続けているのかな、すぐに追い着かれて肩を掴まれてしまった。
けど、それでも負けてたまるかって振り払ったら今度は両腕を捕まえられて壁に押し付けられた。
「俺が陸上部だって知ってるだろ、巳継」
あぁ……もう、逃げられない。
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