91 / 229

狼狽①

あの日のことは、深く湯田に聞けてない。 元クラスメイト達が去っていったあとも、俺は頭が真っ白で……なにをされたかは頭で理解できても、どうしてそうなったのかが理解できなくて。 ただ唇がまだ熱くて……。 湯田の顔が見られなくって……。 そんな状態で、先輩に色々と言われたってなかなか頭に入ってこなかった。 「あいつらは何?」「中学でもあんなだったのか」「だから学校辞めたのか」と質問責めされた。 先輩は多分…噂のことしか知らない。 いや、噂も俺が上書きしたから…どこまでの噂を知ってるのか分からないけど。 ただ俺が先輩を好きで、先輩は違うってことが周りに分かればいいなって、あの頃は思ったんだ。 先輩の質問に答えられない俺に 矢沼が「ストーップ」と制してくれた。

ともだちにシェアしよう!