11 / 20
第11話
俺ってダメな男だなぁってしみじみ思う……
昔から見る目のなさには定評があったけど
男運のなさも折り紙付だと自負してるけど
ロクでもない男に引っかかって挙句に捨てられて
危うく脅迫されそうになって
そして今は清清しい気持ちで片想いしながら
別の年下王子様とちゃっかりエッチしちゃってる
「……はぁ……」
「なんだぁ?何のため息だ」
「いや……ちょっと……」
「やめてよ、辛気臭い」
「お願い、ちょっとでいいから優しい言葉とか……」
「いやよ」
「ねぇよ」
「はぁ……」
いつも通り各自の机でカタカタやりながら
俺はため息がとまらない
大森さんも浜中も「どうしたの?何かあったの?」なんて聞いてくれない
聞いてもらっても答えられないしね!
だって……やっぱりダメでしょ
二十歳だよ?
この年齢差もどうかと思うけど
好きだって言ってくれるのをいいことに
流されて俺も好きとか言っちゃって
ほんっと、やめよう、こういうの
……やめた方がいいってわかってるよ!?
でも身体がいうことを聞かないんだもん!
若い王子様に好き好き言われて抱かれたら
そりゃ気持ちいいっつーの!!
細いけどきっちり鍛えていて
持久力も瞬発力もあるし
バレーボールでは発揮できなかったらしいパワーもテクもあるんだもん!
かくして俺はあの後
結構早々とご飯を食べに行こうと初めて俺から誘って
にっこり笑う風間君を受け入れてしまっている
そう
家に入れてベッドに入れておちんちんも入れてもらっている
かわいい王子様にかわいいと言われて舞い上がってる
「つきあっちゃおうかなぁ……」
そうすれば多分このモヤモヤは消える
小阪さんは相変わらず俺を高木様と呼んで
俺はいつまで経っても一歩を踏み出せず妄想で遊んでいる
風間君とつきあっちゃえばきっと楽しいし
小阪さんのこともどうでもよくなるんじゃないかな
「何!?高木君、彼女できそうなの!?」
「え、いや……」
「そうなのか、和弥?だったらなんでため息だよ」
「わかんないっす……」
「あ。わかった。またアレでしょ?そんなに好きじゃないのにつきあってとか言われてるんでしょ?それで悩んでるんだ」
「ちがーう」
「ほーう。和弥、モテるなぁ」
「大森さん、笑いすぎ」
「失礼。でもお前、今の浜中の話だと相当サイテーだぞ?」
「ですよねぇ……」
浜中の言葉も大森さんの言葉も
事情を知らないのにザクザクと的を突き刺す
あのロクでもない薬剤師で懲りたんだ
好きでもない男とつきあったってハッピーじゃない
今までずっとそうだった
だから風間君ともつきあっちゃダメだと思う
好きだけど
かわいいけど
爽やかイケメン王子だけど
顔も身体もすっごい好みだけど
あんまり経験ないんですとか言ってたくせにエッチも超うまくてメロメロだけど
気持ちがあるのかと聞かれたら答に窮する
そんなんじゃダメなんだよ、きっと
なのに俺はこんな感じ
ああ、我ながらイヤになる……
「あ、いい、いくっ、いくいくいく……!」
正常位で大股開いて
見事な腹筋からの凶暴な下半身に翻弄されて
俺はまた天国へ
少し遅れて風間君も息を詰めて
ゆっくり深く吐き出した
受け入れているアレがピクピクしている
「……は……気持ちぃ……」
「俺もです。高木さん、好きです」
「ん……」
俺が何か言うより先に
甘いキスをくれる
夏が近くて暑くてお互い汗まみれ
縋りつく腕も触れ合う頬もしっとりしてる
風間君は間近で目を合わせながら
柔らかく微笑んでもう一回好きですと言って
俺の中から出ていった
「ん……」
「大丈夫ですか?」
「鍛えてるもん……」
「ですね。真面目にやってるし勘がいいから、綺麗に筋肉ついてますね」
「んっ!ダメだって、触るの」
「え~?触りたいでしょ」
「ダメ……収まらないから」
「俺も……高木さん」
「舐めてあげるね」
汗ばんだ肌を汗ばんだ手のひらで撫で回されて
熱々の身体は冷める様子がない
風間君もそうらしくて
アレがいつまでも大きいままだ
俺はだるくて重い身体を起こして彼に覆いかぶさり
さっきまで俺を楽しませてくれていたモノを握る
「はぁ……高木さん、うまぁーい……」
鍛えてるからね
そうこころで返事をしながら
デカくてカチカチになった風間君のを口いっぱいに咥えて舐め回す
「すごい……高木さんのフェラ、すっごい気持ちいいです」
「んぅ……そう?」
「あ、今の顔、超エロいんですけど!唇、糸引いちゃって」
「風間君の大きいね」
「大きいの、好きですか?」
「……好き」
大きいので奥まで貫かれる!って感じに掘られるのも
優しく抱き締めてくれて好きだよって言われるのも
俺とエッチして気持ちよさそうな顔見るのも好きです
だから風間君とするの好きなんです
人としてダメダメだけどさ……
「したくなっちゃった……もう一回いいですか?」
「……うん」
「高木さんのも硬くなってる……嬉しいです。今度はゆっくりしたいな」
「うん。ゆっくりしよ」
「はーい!……っと、やべ」
「え?」
「ゴムがなーい」
そんなにしたっけ!?
いつ頃買ったっけ?
在庫なかったっけ……
「すみません。俺がうっかりしてました」
「え?いや、高木君のせいじゃないよ」
「俺、今度買って来ますね」
「いいよ、俺が」
「俺が使うんだから、俺が用意しますよ」
「うん……ありがと」
優しいなぁ……
にこって笑われると
俺はうん、て言うしかなくなる
風間君は俺がうん、って言えばいいようにしてくれる
本当によく出来た王子様だ
「どうします?」
「え?」
「つけずにする?口でします?」
「……外で出してくれる?」
「了解でーす」
こんなに盛り上がってるのに入れて貰えないなんてイヤだ
彼に中で出されるのはまだ抵抗あるけど
いつも俺が先にイクし、腹出しならいいかなって
でも俺の目論見は外れた
「あー……すっげ……ごめん、無理」
「え?えぇ……」
「無理です。秒殺です。早漏です」
「何言ってんの~抜かないでよ……」
「生ですると、ほんと高木さんの中、ダイレクトに感じて入れてられないよ。出ちゃうもん」
太くて硬いモノを奥の奥まで入れられて
粘膜が熱に直接触れて悦びに震える
なのに数回動かしただけで
平成の絶倫王はあっさり引き下がってしまった
どうすんの!?
そんな焦らしはいやーーん
「……いいから、入れてよ」
「ダメですって……AV男優みたいに、いいタイミングで抜けそうにない。うまくないけど口でしてあげるね」
「そうなったらなったでいいから」
「高木さん、それだと中で出していいって言ってるみたいに聞こえますよ」
「そう言ってるの。しよ。入れて」
風間君は嬉しそうに笑って
俺にちゅ、ちゅっとキスを落とす
長いまつげが触れるほどの距離で
いいの?と囁かれる
その声だけで腰の奥が熱く締まってくる
「うん……いいよ」
「さっきいっぱいイッたのに、もうここヒクヒクしてる……」
「見ないで……もう、風間君がしたんでしょ」
「そう……俺がね。嬉しい」
風間君の指がゆるゆると俺のペニスを扱く
気持ちよくて腰が浮いてしまう
欲しい
中に突っ込んで
ガツガツ突いてイかせて欲しい
俺の中でイって欲しい
「かざま、くん……」
「かわいい……気持ちいいの好きなんですね、高木さん」
「う、ん」
「もっと気持ちよくなりたい?」
「なりたい」
「もう一回言って?お願い」
「……入れて、そのまま」
「了解でーす」
再び入ってきたのはさっきよりも熱い固まり
俺はあっという間にトロトロに溶かされて
ただ何度も声をあげた気がする
秒殺だなんて言ってた風間君は
ちゃんと俺がイクまでもったし
ずっと激しくやらしく責めまくってくれた
そしてたっぷり種付けされて
久々に感じる身体の奥の感触に満足する俺
……サイテー……
でもサイコーなんだもん……
「あ、お風呂洗っときました」
「え!本当にそんなこと、しなくていいんだよ」
「でもなんか、いっつもここでのんびりするだけじゃ申し訳ないですし」
「そんなの、俺が呼んでるのに」
「そんな風に思ってたんですか?俺、デリヘル嬢じゃないよ。好きだから来るんです」
「……ごめん」
俺はセックスのあとは動きたくない派
だから帰り支度のある風間君がいつも先にシャワーを使う
多少広めのワンルームマンションとはいえ
バスルームは手狭だ
風間君は最近うちのシャワーを使うたびに掃除してくれる
そんなことさせたくないのに
俺がまだ天国と地上の間をふわふわしている間に済ませてしまう
王子様にお風呂掃除なんて似合わないのに
「キスしてもいいですか?」
「いいよ」
「じゃあ、掃除代ね」
笑いながら風間君が甘いキスをしてくれる
年下で俺のことを好きだって言ってくれる可愛い王子様
彼を選ばないことに自分で驚いている
今までにつきあった中できっと一番素敵なのに
ゆっくりと離れていく柔らかい唇
いつも笑みを形作る綺麗な唇
「高木さん、今日も、ありがとう」
「なんで?俺もすっごいよかったもん……来てくれてありがと」
「俺も。ごめんね、中で出しちゃって」
「平気」
「ですか~」
「ですよ~」
「今日も、高木さん最高でした」
「よかった」
「帰りますね。大丈夫?」
「うん。気をつけてね」
「はーい」
王子様は夜の十二時を過ぎる前に帰っていく
ともだちにシェアしよう!