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第46話
「見合い……で、ございますか」
「さようである」
ある日、フォールがラヴィソンのところへ参じて一緒に食事をしていると、家の者たちがなんだか落ち着かない素振りだった。
彼らはラヴィソンの食事時に食堂に集まる。本来であれば給仕をするゼンが食堂にいて、料理をするアンは厨房、ダンは少なくとも食堂にはいないはずだ。だけれど、三人とも食堂を出入りする。ラヴィソンの目がまだ見えなかった頃、三人はラヴィソンが心配でたまらなかった。食事の時間は特に、人間の尊厳と生活に直結する行為だけに気を使った。ゼンは細心の注意を払って給仕をした。アンは、自分が作り盛りつけた料理を彼がどのように食べていて、どのくらい苦労しているかを確かめるべく厨房からちょくちょく食堂を覗いた。ダンはそんなアンを手伝いながら、その屈託のない性格で、俯きがちなラヴィソンを笑わせた。だから、今でもラヴィソンが食事をするときにはみんなが集まり、食堂に出入りする。朝昼はダンやゼンが出かけていることもあるのでそうでもないけれど、夕餉に誰かが欠けると、ラヴィソンは「顔が見えぬがいかがしたのか」と問うほどに、この普通ではあまりない状況が当たり前になっていた。
そんな風に、いつもここでの食事は和やかなのに、不思議に思ってラヴィソンに恐る恐る尋ねてみたら、見合いの支度のことを案じているのだろうと返ってくる。いつ見ても惚れ惚れするほど上品な所作で、ラヴィソンは至って庶民的な食事をその小さな口へ運んでいる。フォールはしばし考えてからまた恐る恐る尋ねる。
「どなた様のお見合いでございましょうか」
「僕である」
「ラヴィソン様の」
「さようである。昨晩、そのような話があり、早々に調えたいとのことであったので、アンは少し落ち着かぬのだ」
「アンは落ち着いております。落ち着かないのはダンです」
「さようか」
名指しされたアンは、落ち着かないというよりは納得がいかないような素振りでラヴィソンの前の新しい皿の料理を説明する。ダンは今この場にいないので判じかねるけれど、アンも、先ほどから黙したままのゼンも、少なくともいつもよりは浮かない顔をしているのは明らかだった。フォールはパクリとアン特製のハムを口に入れ、咀嚼する間、目の前の美しい青年を見つめていた。
ご結婚なさるのか。
何だか不思議な気持ちだ。そしてやはり、落ち着かなくなった。なるほど、彼らの心持がよく理解できる。大切なラヴィソンの大きな変化を、どう受け止めていいのかわからないのだ。
「おめでたいことでございますね」
フォールがそう言うと、アンとゼンはピタリと動きを止めた。そしてひどく不思議そうにフォールを見て、いつもの調子に戻っていく。ラヴィソンは匙を置いて口元を拭うと、水の入った杯に手を伸ばす。
「見合いはめでたくはない。ゆくゆく成婚となればそれなりであろうと思うが」
「は。失礼をいたしました」
「僕には身寄りがないも同然で、なおかつ仕事も収入も財産もない。アンソレイエ国王陛下の慈悲と情けで生きている。しかしいつまでもそれらにお縋りしているわけにもゆかぬ。この身を、引き受けてくれる先を探すべきである」
「……恐れながら、陛下より、そのようなお達しがあったのでございましょうか」
「いいや。しかしわずかずつであっても、陛下のご厚意には報いられるよう務めたい」
ラヴィソンは再び匙を手にする。そのたやかな手で誰の手を引くのだろうかと、考えても想像ができない。彼の隣にあるべき女性は、どれほどの人物だろうかと。
ゼンはいつも通りの穏やかな無表情であったけれど、アンは唇をかみ締めて、辛そうだった。ラヴィソンがゆく先の許しがなければ、彼らはラヴィソンと離れてしまうのだから、それはそれは辛いだろう。
俺もか。
気づいたとたんにフォールの気も重くなった。この美しい主が妻を娶れば自分など、お傍に呼んで頂ける機会はなくなるだろう。自分としてはこの先何があろうと生涯ただ一人の主だと忠誠を誓っているけれど、ラヴィソンは立場上、誰かを雇うことも従えることもできない。そうなればまた、お目にかかることの出来ない日々が延々と続くのだ。もしかしたら、永久に。
フォールは思わずため息をついてしまった。ラヴィソンはそれを、具合が悪いのだろうかと心配した。
「盲目であれば、難しかったのであろうけれど、光を再び得て、人並みに戻ったのでそのような引き合いがある」
「ラヴィソン様におかれましては、光のあるなしに関わらず、大変ご立派であられると存じます」
「僕の目が見え」
「恐れながら。どうぞ、そのようにはお考えになられませんよう、お願いを申し上げる次第でございます。……大変な無礼をお許しください」
「……よい」
ラヴィソンの言葉を遮ってしまい、フォールは暗澹たる思いだった。恐らく二度目だ。本来なら許されることではない。しかしそれほど、承知しかねる告白だったのだ。目の見える見えないなど、彼の価値になんらの影響もない。フォールはそう断言できる。そしてその気持ちは家の者たちも同じだった。確かに非力で薄倖であることを不憫に思った。だからこそ、あらゆることから守りたいと思ったのだ。それはきっとフォールの決意に負けないほど強く。
その日はなんだか誰もがぎこちなく、静かに過ぎていった。
フォールは、今までと変わらずラヴィソンに尽くした。非番には屋敷を訪れ、食事を共にし、馬術を教えたり仕事の話を聞かせたする、これはいつまでも続く日常ではない。そう思い知らされ、美しい人の姿を、声を、今はただ大切にしたかった。側仕えたちも、誠心誠意お世話をした。ラヴィソンは、フォールが今まで以上に穏やかになったような、家の者が今まで以上に優しくなったような気がした。
ゼンは見合い話の扱いに苦慮していた。相手は王宮に勤める高位の文官で、詳細はまだ聞かされていないけれど、ラヴィソンとも面識がある人物らしい。妻に先立たれ、ラヴィソンの境遇を不憫に思い、自分のところであれば生活に苦労することなく自由に勉強ができる、だから、ということらしい。結婚というよりは養子縁組に近い。下品な思惑はないようだけれど、息子ではなく配偶者にと望んだのは、やはりラヴィソンが美しいからだろう。
見合の席を設けて顔合わせをすれば、この話はもう決まったも同然だ。ラヴィソンに、断ることはできなくなる。ゼンにすれば、誰かに、自分の元へ来れば不自由はさせないなどと言われる覚えはない。今ラヴィソンは生活に不自由などしていない。ひもじい思いもさせていないし、いつも清潔な服を身につけ、望むだけの教養も得られる。だから、好意とはいえこの見合い話は屈辱的とさえ取れて受け入れがたい。翻って、ラヴィソン本人がいまだに自身の価値を低く見ていることも歯がゆかった。身寄りは確かに、この国にはないだろう。しかし立派な仕事もそれに見合う収入もあるし、それらの蓄えだってある。例え今もし、国王がラヴィソンの保護から一切手を引いたところで、自分たちさえいれば彼は恙なく生きていける。そういう自負があるのだ。この穏やかな生活を、誰にも邪魔されたくはない。
だけれど、それがラヴィソンのしあわせなのかと問われれば、断言を迷う。誰かに寄り添い、愛されながら送る人生には及ばないかもしれない。愛を知らない美しい青年は、それを与えられてしかるべきなのだから。だけど。
「……ゼンさん、お返事、なさいませんとねぇ……」
「ええ……もう少し、猶予がありますので、坊ちゃまとご相談したいのですが」
「ご本人が、それで構わないとおっしゃられてますもんね……」
側仕えたちは、ラヴィソンが自室で休んだ後、額を突き合わせるようにして途方に暮れていた。そして彼らの胸中には、馬の扱いに長けた大柄で穏やかな男が、薄幸で美しい青年と思いを通じ合わせてはくれないだろうかと、そういう願いがあった。もちろん、本人たちにそんなことは言えないし、ラヴィソンが自分の将来を考えて、どこかへ身を寄せればいいと、そうすれば安泰で安心できるというのであれば、それを邪魔することなどできない。
ラヴィソンの望みは、なんなのだろうか。
側仕えたちのため息は大きくなるばかりだった。
そして、自分の部屋で一人、フォールも同じように悩んでいた。
見合いをして、誰かと夫婦になる。自分がそういうことを考えないからか、ラヴィソンの身の上にそんなことが起こることは予想だにしておらず、戸惑うばかりだ。彼に何があっても、自分は変わらない。しかし、自分が変わらないことはラヴィソンのしあわせにつながるのだろうか?護衛など必要のない日々を長く過ごし、フォールにできることと言えば馬のことを教えたり、たいして面白くもない話を少し聞かせる程度で、役に立っているわけではない。美しい青年が、新しいしあわせを誰かと掴むと言うのであれば、その邪魔などできない。自分には、何もできないのだから。
ラヴィソン様の、お望みのままに。
フォールにはそれがすべてだ。そのためには何でもしようと思う。例え二度とその姿を見ることができなくなったとしても、ラヴィソンがしあわせならそれ以上何も望まない。
夜はゆっくりと更けていく。
◆
見合話の諾否の返答は、数日のうちにと言われている。ゼンは、少し落ち着いてからと、二日ほどしてから、就寝前のラヴィソンとゆっくり話をした。
「お見合いをなさってから、やはりなかったことにと、そのようには罷りならぬことであると存じます」
「うむ」
「でございますので、さまざまお考えになってから、お出しになったお答えが頂きたいのでございます」
「婚姻に、当事者の意思はあまり関係ないように思う。状況を鑑み、それが最善の道であれば、選ぶべきである」
「……見ず知らずの者との婚姻が、今の最善でありましょうか」
「わからぬ。しかし、心もとないこの身を立ててくれるのであれば、陛下にも顔向けができよう」
「坊ちゃま……」
「そなたらのことは、きちんといたす。案ずることはない」
ラヴィソンは、美しい目を少し伏せて、ゼンの気遣いをねぎらった。しかし、ゼンにはそれが最後通告のように聞こえて、絶望さえした。自分の気持ちを吐露することのない青年は、このままどんどんうすら寒いような世界に行ってしまうのではないだろうか。ここに、あたたかさがあるのに。
ゼンはこのやり取りを他の二人に伝えた。隠すことはできない。今後を考えなければいけないのだから。二人は絶句し、アンは少し泣いていた。
「このお屋敷での生活が、お辛かったのでしょうかねぇ……」
「まさか、そんな」
「でも……私たちでは、お支えできないのですね……坊ちゃまには、笑顔でいていただきたい、それだけなのに」
「アンさん……」
ラヴィソンにはラヴィソンの考えがあるのだ。それはきっと、安易でも安直でもなく、熟慮の結果だろう。だからこそ、そんな答えを出してしまったラヴィソンと、真意を知らされないまま離れるのは耐えがたく、こころが潰れる思いだ。
ダンはたまらず立ち上がり、勝手をしますが、と二人に断った。
「フォールに、頼んでみます」
「ダン、それは」
「坊ちゃんを止めてもらおうとは思いません。ですが、フォールなら、坊ちゃんの本当の気持ちを聞けると思うんです」
「……言いたくない本音を、聞きだすことはよいことではありませんよ」
「言いたくないという自覚すらなく、ただ黙しておられるのであれば、お救いできるのは今しかありません」
本当に誰かと結婚して、この国での安定をというのが彼の本望であるのであれば、その手伝いを全力でしよう。だけど、慎ましく思慮深い異国の青年の気持ちは見えにくく、自分を殺してばかりに見えるから。
ゼンは止めなかった。アンも、頷いた。だからダンは、夜更けにもかかわらず馬を飛ばし、フォールの住む村へ駆けた。
フォールの部屋は軍の管轄の建物の中で、だからもちろん勝手に入ったり扉を叩いたりは出来ない。入口に立つ警備の男に、フォールに会いたい、一大事なんだ、取り次いでくれと頭を下げる。
「どうしたんだ?ラヴィソン様に何か」
「フォール……」
裸足のまま寝間着姿で階段を駆け下りてきたフォールを見たら、ダンはどう言えばいいかわからなくなった。
お見合いのこと、坊ちゃんはきっと自分のこと以外を考えてるんだ、だから坊ちゃんの本心を聞いて欲しいんだ、じゃないと彼が不幸になってしまうかもしれない。坊ちゃんは、もう何も我慢しなくていいのに。
自分の考えを口に出せば、なんて身勝手で傲慢なんだろうかと後悔した。だけど、止められなかった。あの美しい青年は、ずっと耐えてきた。静かに粛々と、自分の願いなんて口にせず、ひたすら側仕えたちの言うことを聞いて、ただ、生きてきた。だから、彼の望まないことを、させるのだけは絶対にしたくない。おせっかいなのは百も承知で、ダンはほとんど泣き顔になってフォールに縋りついた。
「頼むよ、フォール。もう俺どうしていいか」
「ダン、わかったから、落ち着いてくれ」
「ああ、でも、時間がないんだ」
「わかるよ。でも、今きっとラヴィソン様は休んでおられるんだろう?そのお邪魔は出来ないよ」
「そう、だな」
「俺が何の役に立てるのかわからないけど、ラヴィソン様とお話しする機会がいただけるのはありがたい。まあ、お考えを、お聞かせいただくつもりはないんだが……」
「え!?なんで!?」
「どんなお考えかなんて、俺が知る必要はないから」
ラヴィソンがそのようにと言えば、それが決定であり、理由を聞く必要などない。それが当然であり、通常だ。だけど今回は確かに、ラヴィソンは現状把握を誤っている節はある。彼は今、間違いなく自分の力で生きているのだ。この国の王など、どれほどのものでもない。
「ありがとう、ダン。君たちお側仕えの方に頼ってもらえて、俺はすごく嬉しい」
「でも、聞かないんだろ?」
「聞かないよ。ただ、お許しいただけるのであれば、俺の気持ちをお伝えしたい」
「フォールそれって……!」
ダンは期待した。二人が愛を確かめ合う仲になるのではないかと。しかしフォールは言葉通り、今自分が考えていることを言おうと思っているだけだった。
「明日の朝、お屋敷へお邪魔するよ。そう、ゼンさんに伝えてくれるか?」
「ああ、わかった」
フォールはダンの肩をポンポンと叩いて、気を付けて帰ってくれよと笑った。ダンは、あとはすべて、フォールに任せようと思った。
◆
翌朝、ラヴィソンがまだ起きないような時間に、フォールは屋敷へ来た。側仕えたちは誰もがフォールを待っていて、一睡もできなかった。
「お邪魔をいたします。ラヴィソン様は、まだお休みでいらっしゃいますか」
「ええ……もうしばらくしたら、ご自分で起きて、馬小屋へ行かれると思います。フォール、坊ちゃまは、お一人でお着換えもなさるの。自分の馬だからとお世話をなさるから、朝早いからと私を呼ぶこともなく。誰にも、養ってもらう筋合いなどないわ。本当にご立派な方なの」
「ええ、アンさん、ラヴィソン様はご立派であられると、私もそう思います。えーと、じゃあ、馬小屋で、馬の世話でもしながら待ちま」
「まあ、フォール!大事なお話なのよ!馬小屋でするつもりなの!?」
「いや、そんな」
「フォール殿、坊ちゃんと朝餉を一緒になさってはいかがでしょうか」
「いや、そんな」
「そうしてくれよ、フォール。あんたしか頼れる人はいないんだから」
「いや、そんな」
「すぐに朝餉の支度をしますわ。フォール、食堂にいてちょうだいね」
フォールは何とか彼らを説得して、馬小屋でラヴィソンと顔を合わせることを許してもらった。食堂で向かい合わせに座ればその距離は少し遠くて、それに、彼と同じ高さに座った状態で話すことではないと思ったからだ。
ダンがまめに掃除をしているのだろう、相変わらず馬房は綺麗だ。まだ眠っている馬たちはおとなしく、庭の向こうには少し朝靄が見える。静かな朝だった。
「フォール?」
ラヴィソンが日課である馬の世話をしに現れた。フォールは長く伸びた白金の髪を揺らしてすぐさまその場に跪き、深く頭を下げる。
「おはようございます、ラヴィソン様。本日もご機嫌麗しいこととおよろこび申し上げます」
「うむ……しかし驚いた。なぜここに?非番は明日ではなかったか。それに少し、早いようだが」
「は。本日は仕事が遅く始まりますので、ラヴィソン様のご尊顔を拝したく参りました。突然のことでご無礼をいたしました。どうぞお許しください」
「さようか。かまわぬ。むしろありがたいことだ。このような格好ですまぬことである」
「は。ラヴィソン様におかれましては、どのようなお召し物であっても常にお美しいことと存じます」
「これは僕が一人で着られるようにと、誂えてくれたのだ。馬の世話で朝早く起きるので、アンの手を煩わせずに済む」
確かに簡易ではあるけれど、別に見苦しいわけではない。頭からスポッと被る締め付けのない服は、よくある形だし、生地はきっと上等だろう。フォールは、アン殿へのお優しいお心遣いにはこころより敬服いたしますと、さらに頭を下げた。
「毎朝の馬のお世話は、今のところ欠かすことはない」
「ご立派でございます」
「……些細なことである」
珍しくラヴィソンがそんな風に自分を小さく言い、そばにあった桶に水を汲んだり、馬房の藁を均したりし始める。フォールは手伝いたかったけれど、これはラヴィソンの日課であり、手を出さずに、ただそのまま控えていた。
「……あの時見学したようには、できぬものである」
「……は」
「飼葉の塊は重く、僕には運べぬ。水も、ダンは一度に僕の三倍ほどを汲む」
「……」
「お世話をしているとはいえ、全く十分ではない。ダンがおらねば、馬たちは飢えて弱るだろう」
「……」
「自分を卑下しているのではない。しかし、事実である」
ラヴィソンはそれっきり、黙々と日課をこなした。馬に声を掛け、フォールがいるのだぞ、おはようと挨拶をするがよいと、馬を見ているときだけはわずかに微笑む。静かな光の中で大切な馬に寄り添い、今日一日、そして明日もまた、同じような日々を思う。
フォールは、こういう時間の過ごし方が、ラヴィソンに合っているような気がした。何かにこころを痛めることなく、何かを憂うこともなく、穏やかに過ごしていくことが。
「本日はまた、あのような厳しい訓練を行うのだろうか」
「いえ。本日は本来の仕事に専念する予定でございます」
「さようか。大変立派であることだ」
「恐れ多いお言葉でございます」
「いや、立派である。フォールは新しい仕事をきちんと務めている。僕はそういったことがない」
「恐れながら。ラヴィソン様が王宮の方々と面会し、お話されるということは、私の仕事と比べるべくもなくずっと有意義でご立派であることと存じます」
「さて」
ラヴィソンはポンポンと二頭の背中を叩いて、馬房から出てくる。フォールは頭を下げたまま控えている。ラヴィソンは今の自分を憂いているのだろうか。自分を哀れに、もしくは卑下されるべき存在だと考えているのか。もしそうなら、そんな必要などないのだと、できることなら伝えたい。もし、許されるのであれば。
ラヴィソンは背筋を伸ばして庭に立ち、辺りをゆっくりと見渡した。毎朝思う。なんて美しい景色なのだろうかと。庭はもちろん、遠くの木々や周囲を満たす空気さえ、ため息が出るほどだ。覚悟していたのには程遠い、恵まれすぎた境遇。王宮から見合いの話が来るということは、長く続いたこの生活を終わりにせよとのことなのだろうと、ラヴィソンはそう捉えていた。よく尽くしてくれる三人は、王宮から遣わされている。優秀な彼らを、いつまでも自分に与えることはできないのだろうとも。
「……僕も、どこかへ仕事に出るべきだろうか。平民としての労働を、行うべきか」
「ラヴィソン様がそうなさりたいとお考えであれば、誰も反対は致しませんでしょう。しかし、先ほども申し上げました通り、今なさっていることはラヴィソン様にしかできないことで、この国の、ひいては国王の利益にかなうものであることは間違いありません」
「僕はもう平民である。今の振る舞いは、それに似つかわしくないと考えるが、いかがか」
「私には、わかりかねます。どうぞお許しください」
ラヴィソンが贅沢を望んだことなどない。フォールはそれをもちろん承知している。だけれど、例えばフォールの住む村の人たちのような生活かと言われればそうではない。しかしそれがなんだというのだろうか。人には本分というものがあり、彼は怠惰でも傲慢でもない。聡明で思慮深く、何より周囲への気配りがある。今のラヴィソンを、彼の生き方を、批判する者がいるとすれば、フォールは排除へ動くだろう。美しい青年の先行きを、誰にも邪魔はさせない。
ラヴィソンは、跪き頭を下げれば大きな岩のようにさえ見える穏やかな男を見て、自分の揺れる気持ちが少しおさまりつつあることを自覚した。
「……時間は、まだあるだろうか。朝餉を共にいかがか」
「ありがたきしあわせでございます。恐れながら、お許しいただけるのであれば、ぜひご一緒させていただきたく存じます」
「うむ。アンも喜ぶ。家の者はみな、フォールが来るのを楽しみにしている」
「ありがたいことでございます」
「見合いをし、成婚となれば、縁遠くなるのだろうな」
庭の柵に絡まりツルを伸ばしていた花のつぼみが一つ、わずかに綻んでいる。一番花だろう。ラヴィソンはそっと手を伸ばし、細く白い指で優しく触れた。どんな花が咲くのだろうか。咲くまで、この屋敷にいられるだろうか。
フォールは顔を上げ、ラヴィソンの背を見た。薄く、しかしすっきりと伸びたその背筋は、離れている間もずっとフォールの道しるべだった。その漂う哀情に、気づかないはずもない。腹は決まった。
「……ラヴィソン様に、お尋ねしたいことがございます。私ごときがこのようなことをお尋ねするのは無礼の極み、思い上がりも甚だしく分不相応であるとは承知の上でございます。それでも、お許し願いたく存じます」
「許す」
「お側仕えの方々と、離れてしまいたいとお望みでございますか」
ラヴィソンは答えなかった。フォールを振り向くこともない。白い手は、止まっている。風が吹き、朝靄が少し迫ってきたように思えた。ラヴィソンの姿を、気持ちを、隠してしまうかのように。
「……人間は、決して一人で生きていく事はできないと存じます。誰かと助け合いながら、毎日を終えていきます」
「……僕は、助けられるばかりである」
「恐れながら。私からは、お側仕えの皆様方は、いつもラヴィソン様に助けられ、癒されておられるようにお見受けしております」
「そのようなことは、ないと考える」
「どのような立場であれ、お互いを大事に思う関係であれば、どちらか一方だけが助けていることはないと、そのように推察いたします」
「さようか。わずかでも、この身が彼らの助けになっているのであればよいことである」
「恐れながら、私も、いつもラヴィソン様に助けていただき、救っていただいて参りました」
「……」
「私は、ラヴィソン様がおられるから生きてこられました。あの日から、ラヴィソン様の護衛を仰せつかった日から、誠に勝手ながら私のこころにはいつもラヴィソン様がいてくださいました。その任を解かれ、お傍を離れている間もずっと、でございます」
「……」
「もし、ラヴィソン様が、ご自身の完璧ではないと思われるところを変えようとお考えで、でもそれは本望ではないのであれば、そうなさる必要はないのではないかと存じます」
「わからぬ」
「ラヴィソン様は、今そのままで、私にとってかけがえのない方であり、彼らにとってもまた、大切でありましょう。ラヴィソン様のお望みを、お聞かせいただきそれを叶えられることこそ、私やお側仕えの皆様の最大の喜びでございます」
「しかし僕は、彼らに報いる事は出来ぬ」
自分の足元も覚束ない。どれほど彼らに感謝をしても、彼らに褒美を与えることもできない。どこかで大々的に褒め称えてやることもできない。何かあった時に守ってやることさえできない。自分には何もないのだから。
誰かの情けと厚意で生かされていて、だから、思いあがることなくその都度の最善を考えなければいけない。この身は自分のものではない。祖国を救ってくれたこの国と王に、捧げたのだから。王宮の意向がすべてなのだから。
「重ね重ねの無礼を承知で、もう一度お尋ねいたします。この屋敷を出て、彼らと離れてしまいたいとお望みでございましょうか」
「……」
「彼らと、もう会えなくなっても、それでもご自身の」
「嫌である」
ラヴィソンはギュッと拳を握った。嫌なのだ、本当は。どんな境遇に堕ちようと、彼らと離れたくはない。だけどそれを望むことは許されない。自分は囚われの身も同然で、その立場では、彼らに縋ることなどできないのだから。この手で何かを、誰かを、掴んではいけないのだ。
だけど、本当は。
「……光を失い、人生に絶望していた時も、彼らは僕を支えてくれた。一度も憐れむことなく、常に僕を尊重してくれた」
「はい」
「光を取り戻した後もずっと変わらず世話をしてくれて、僕の毎日を豊かで確かなものにしてくれる」
「はい」
「僕は彼らを好ましく、とても大切に思っている。離れれば寂しく、いつも考えることであろう。一緒に過ごした日々を懐かしみ、どうかしあわせでと祈り続けるだろう」
それしか自分にはできないのだから。ラヴィソンは、自分の無力さを呪い、それ故に手放さなければいけない大切なものをこころの底から惜しんだ。諦めたくなど、本当はないのだ。
フォールは、朝の広がる世界の中で、美しい青年が、彼の性根の美しさが、眩しいような思いだった。
「そのような人生は、大変にお辛いものではないかと推察申し上げます。そのような思いに沈んで過ごすのであれば、多少の事など、良いのではございませんでしょうか」
「良い、とは」
「今のこの生活を続けていかれることをお望みであると、誠に勝手ながらそう承知いたしました」
「……」
「であれば、そうなさることに、誰も反対は致しません。ラヴィソン様のお悲しみは、誰のしあわせも生みません」
「……」
「この度のお見合いのお話は、政治的なものではないと考えます。ひとえに、ラヴィソン様の素晴らしいお人柄と優秀で明晰な知性、一筋の陰りもない美しさゆえの、引き合いであることと推察いたします」
「……」
「身分の高い方々の社会ではよくある、見初めたゆえの縁談であって、王宮の意向ではありえませんでしょう」
「なぜ、そう言い切れるのか」
「これがもし国王並びに王宮の意図するものであれば、あの調子のいい宰相が顔を出さない道理がございません」
しばらく息を詰め、じっと黙っていたラヴィソンは、ゆっくりと振り向きフォールの方を見た。フォールは気づかわし気に、だが、目に自信を湛えている。本当にそうなのだろうか。ラヴィソンは自分の臆病さゆえに物事を見極めることを半ば放棄していたことを恥じた。真実を知り、それから考えるのだ。それはきっと、許される。
フォールは、ただ息をしているだけで価値があるこの美しい青年が、もし仮に一人で生きていけないとして、それが何だと言うのだと思っていた。飼葉の塊が運べないのなら自分が運ぶ。そう思う人間が彼の傍にはいる。日常のことなど、どうでもいい些末な話だ。彼が穏やかに過ごすこと。それがすべてだ。
「…………本日、手紙をしたためる」
「は」
「この度の話の詳細を確かめ、わが身の振り方を、僕は真摯に考えなければならぬ」
「は」
「僕の答え一つで、家の者が悲しむ。自分もしなくてもよい思いを抱えることとなり、それが周囲によくない影響を及ぼしかねぬ。…………今、はっきりそのように理解した」
「は」
「この国と、国王陛下に背くことは許されぬ。しかし、家の者を悲しませないために、自分と彼らを守るために、僕は常に深慮を投げ出すことはしてはならぬ。そうであるな?」
「恐れながら。ラヴィソン様のご高配を賜りたく、伏してお願いを申し上げる次第でございます。重ねて、私の無礼の数々を、何卒お許しください」
「フォールは、いつも僕に許しを請うけれど、同じ平民であるから、僕は許しを与える立場ではないのだ」
「私にとって、ラヴィソン様は何が起きても従うべき主でございます」
「さようか」
「そのような考えを、お許しくださいますか」
「好きにするがよい」
誰かの言いなりになるべきではない。いつも考えなければいけない。自分の周囲のために、自分自身を大切にしなければいけない。
ラヴィソンのこころは晴れた。
「朝餉に致す」
「は」
「本日、時間を作って訪ねてくれたことに感謝している」
フォールは黙って頭を下げた。稚拙な言い訳など、ラヴィソンには通じていなかったのだろう。
フォールを従えて食堂に着くと、三人が勢ぞろいでラヴィソンを迎えた。なんだか緊張したような彼らの面持ちは、ラヴィソンを少し驚かせたけれど、ゼンはいつも通りそつなく椅子を引いてくれたし、アンとダンは一礼をして調理場の方へ消えていく。
朝餉は何事もなく静かに進み、全員が食堂に会している中で終えられた。ラヴィソンは口元を拭って、殊更に背筋を伸ばして、大事な彼らの顔を見回す。
「この度の、僕の見合いの話であるが、そなたらに心労をかけたことをまず詫びたい」
「坊ちゃま、そんな」
「僕は自分のことであるのにまともな思考を放棄し、徒に感傷的になり、誠に愚かであった。僕の為すべきは、物事の意図を決めつけて受け入れることではなく、わからぬことは調べ、納得のいく答えを探すことである」
不安そうな三人に、ラヴィソンは微笑んだ。もう少しで、彼らから離れてしまうところだった。その必要がないのであれば、この生活が続けられるのであれば、努力を惜しむはずがない。最初からそれが最善だったのだ。
「この後、手紙をしたためる。この見合いについて、陛下のご意向を確かめ、僕の自由意思が認められるのであれば、断ろうと考える」
アンは、ああ、と両手で口元を覆い、涙ぐんで隣のダンに肩で体当たりしている。ダンは、さあすぐに書きましょう!と両手を握りしめて雄たけびを上げる。ゼンは黙ったまま何度か頷き、フォールに目を伏せて感謝を伝えた。
フォールの考えた通り、この見合いに政治的な意味合いはなかったようだ。ラヴィソンの書簡はゼンが自ら、全権を持つであろうジョワイに届けられ、そのまま面会をし、お見合いですか、どこを掻い潜ったのでしょうねぇ、ほとんど私が潰してますのにねぇと、あっけらかんと笑う宰相から言質を得る。
「この度のお話、お断りして、坊ちゃまに不利益はないと考えてよろしゅうございますか」
「不利益?愛をひとつ、得損ねるということはありますけどね」
「そういうことではなく、坊ちゃまは、自分の身を、後見してくれる人間に渡すべきなのかと悩んでおられたのです」
「後見人が必要ではないでしょう」
「ええ、もちろん。ですが、ご本人はそう考えておられません。この国において、一人で生きていけないのであれば、誰かに養われよと、王宮はそう意図しているのではと思っておられるようです」
「理解できませんね。相手がたまたま王宮勤めだっただけで、そもそもその見合いを言い出した文官よりも高給取りなのではないですか?」
「あいにく、坊ちゃまはご自身の収入や財産を知ったところで、それがどれほどのものかという相対的な部分について、お詳しくはないのです」
「自分で貨幣経済に貢献したことがないのでしょうね」
「その手に金銭を握ることはなさったことがないようでございます」
別にそんな経験をする必要はないと、ゼンは思った。ラヴィソンにしかできないことはたくさんあって、それ以外のことをまかなうのが自分たちの役目だ。しかし、色々と不手際があったのかもしれないと、ゼンは反省もしている。
この国の実務における最高権威者は、相変わらず飄々とし、その整った顔を顰めることもない。自身もそういう生活を、しようと思えばできる一族の出だからだ。そして堕落など、簡単だと知っている。そんな中、あの異国の美しい青年はよく踏みとどまっているものだと感心さえしている。自分の立場を忘れ、勘違いするには十分な時間を過ごしているのに。
「このお見合いは、ラヴィソンの好きにすればよろしいかと。申し込んだ文官に、悪気も非もないと思いますが、私の目を掻い潜ったその地味さ加減に注意が必要ですね」
「地味さ加減」
「仕事もできるし、差し出がましいところもない。ラヴィソンに近づこうとする者は多く、そのほとんどを把握しているつもりでしたが、彼のことはその範疇外でした。地味でしたので」
「……人には色々と、特技や美点があるものでございますね」
「ええ。ま、断られるのも覚悟の上でしょうから、情けは無用です。バッサリどうぞ」
「王宮も、国王陛下も、ラヴィソン様の現状に変化を加えるおつもりはないという理解で、よろしゅうございますか」
「我が王はラヴィソンの嫁ぎ先?婿入り?そんなことにご興味はないと思いますよ。一応報告は致しますが、うーん、なんとおっしゃいますかね、自分の息子と同じ年ですから、ちょっと嫌な顔をなさるかもしれませんね。もうそんなことを考えねばならんのか、とかなんとか。あの人、ちっとも子離れができてないから」
知らず、ジョワイは兄を思う弟の顔になり、肩を竦めてみせた。そして気を取り直し、こちらからラヴィソンの生活に口は出さないと明言した。
「これでようやく安心できます。お時間を戴きましてありがとうございました、宰相殿」
「いえいえ」
「ところで、なぜ宰相殿は坊ちゃまのお見合い話を潰して回っておられるのですか」
「裏がある話もあれば、悪意のある話もありますからね。それに、先ほども申しました通り、国王陛下にはこころ穏やかでいていただきたいものですから。すなわち、我欲でございます」
ジョワイは悪びれもせずあっけらかんと、私の都合ですから悪しからず、と笑って見せた。そして、もしラヴィソンが結婚したいと思う相手がいるのであれば、さすがに報告をお願いしますねとも言う。
「制限を、加えられるのでございましょうか」
「背景が穏やかであれば問題ありませんが、一応諸々調べはします」
「…………家族が、増えることはいかがでございましょうか」
「どこかの女に子を産ませ、その子を引き取るということですか?結婚はせず」
「いえ、その、単純に、屋敷に住む者が増えるという意味でございます」
「ご自由にどうぞ。あなた方の良識に期待しています」
ゼンは深々と頭を下げて、王宮を辞し、急いで屋敷へ戻った。ラヴィソンの来客が終わるのを待って、この度のお見合い話に王宮は関与しておらず、諾否はラヴィソンの好きにしてかまわないということを報告する。その場には、他の二人もおり、みな一様に胸をなでおろした。
「様々騒がせたことを、今一度詫びよう」
ラヴィソンは三人を見回して、自らの浅はかな振る舞いを反省した。そしてはっきりと、この度の話は受けないと、そう言った。側仕えたちは一様に頭を下げて、かしこまりましたと答える。
「ところで坊ちゃま」
「何か」
「ゼンは今、とても怒っております」
「……そのようには、見えぬが」
「さようでございますか。しかし、とても怒っております」
「……それは、僕が原因であろうか」
「さようでございます」
「アンも怒っております」
「坊ちゃん、ダンもです」
ラヴィソンは狼狽した。彼らは怒っていると言うが、とてもそうは見えない。いつも通りにこにこしている。怒っているのか。どうしたものだろうか。ゼンは殊更に笑みを深め、言葉を足した。
「日々、坊ちゃまのお世話に努めてまいりましたが、そのうち伝わるだろうと放棄していた部分がございました。しかしこの度のことで、やはりご理解いただくべきはしっかりご説明しなければいけないと、そのように反省いたしました」
「僕に至らぬところがあったのであれば、善処する。みなが何かと気づかい、教えてくれることに感謝しているし、それには報いたい」
「では、しばらくお時間を戴きとうございます」
その日の夕飯の時間がいつもより遅くなるほど、ラヴィソンは三人の話を懇々と聞かされた。アンとダンはいかに心配したかということだったけれど、ゼンは違った。王宮から借りてきた、この国の主だった物の値段の資料などを使い、各職業の給金の額、家賃の相場や馬車の賃料など、ありとあらゆる金にまつわる話をした。そうしてから、改めてラヴィソンの資産や収入の話をする。
「ゼンはずっと、坊ちゃまにはちゃんと収入も財産もあるとお話してまいりました」
「うむ、さようであった」
「ですのに、坊ちゃまは自分にはそのようなものはないとのご理解でした」
「うむ、それは僕の間違いであった」
「あげく、であるから自分は誰かの囲い者にならざるを得ない境遇であるとの結論をお出しになられた」
「うむ、そのことについては反省している」
「ではもう一度。坊ちゃま、坊ちゃまはどのくらい豊かであるか、ご理解いただけましたか?」
「うむ、他の職業、例えば今回の相手であった文官よりも高い収入を得ていて、それらを蓄えた末の財産は、この先一生食うに困らぬ程度である」
「さようでございますね、それから」
「であるから、誰はばかることなく、自立していると胸を張ってよい」
「さようでございますね、それから」
「であるから」
ゼンの講義のようなお説教はなかなかの圧力があり、言いたいことを聞いてもらって先に気の済んだダンとアンが、せっせとお茶を運びお菓子を出してラヴィソンを応援し続けるほどだ。ラヴィソンはゼンの心配も気落ちも理解しているので、彼の説明をしっかり聞き、大丈夫だ、もう二度とあんな馬鹿な考えは起こさないと、ゼンが納得するまで頑張り続けた。ひしひしと、彼らの怒りを肌で感じもし、自分の愚かさを嘆きたくなるほどには、大変な時間を過ごした。
後日その話を聞いたフォールは珍しく肩を震わせて笑ったという。
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