4 / 72

第4話

翌朝。 灯真は朝食に現れなかった。昼食にも現れなかった。 長瀬医師に尋ねると、雫に噛まれた傷が化膿して、高熱をだしていると言った。 「とても体が弱いんだ。傷を作らないようにとあれほど言ったのに。」 自分が悪いとは、頭では思わなかったけれど、なぜか息苦しくて心が落ち着かなかった。 結局主はそれから3日間、寝込む事になった。 4日目の朝、粥を届けるように言われて、おそるおそる部屋を訪れた。 灯真はベッドで半身を起こして、こちらを向いていた。 一瞬見えているのかと思ったが「雫か。」と問う眼差しは誰もいない空間に向けられていた。 「はい」と応える。 「お前の毒で死にかけた。」冷たい声。 毒だなんて。雫が俯いて黙っていると、 「死ねればよかったのに。」と顔を背けてつぶやいた。 「お粥を、お持ちしました。」 そばに近づいて言うと、「食べたくない。」とやつれの見える頬をみせて言う。 「でも、召し上がらないと。」 「じゃあ、食べさせてみろ。」挑発するようにいう。 スプーンにすくって、吹いてさました。 そっと口に持って行ったが、案の定食べようとしない。 少し迷ってから、雫は自分の口に粥を含むと、灯真の唇にそれを重ねてみた。 突き飛ばされるかと思ったが、反抗の兆しはない。 すこし舌で内容物を押し出してみると、微かに口を開いて受け入れたようだった。 うまく送り込めなくて、あらかたこぼしてしまったが、灯真の喉が粥を飲み込む音を雫は聞いた。 「また毒入りですけど。」そういうと、灯真はつまらなそうに鼻をならした。 「お前の毒にはもう免疫が出来た。」 雫はベッドに腰をかけると、また粥をすくった。 灯真がもういいというまで、口移しで粥を運んだ。

ともだちにシェアしよう!