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第12話 第2部

「灯真さん?」 主の部屋をそっとあけて、声をかけたとたん、灯真はものすごい勢いで駆け寄ってきて 雫に抱きついた。 雫の主、灯真は盲目だが、自分の部屋の中ならば、まるで見えているかのように 行動することができる。 「雫、治ったのか?」 「うん。もう大丈夫。」 雫がこの屋敷に来て、すでに1年以上が経過していた。 灯真17歳、雫15歳。今ではふたりはまるで、産まれた時から片時も離れたことが なかったように、常に一緒に行動していた。 灯真のかたわらにはいつも雫がいて、盲目の彼のためになにくれとなく世話を焼き、 花の開花を教え、空の色を知らせ、その白い手を導いて暮らしていた。 3週間前、灯真が風邪をひいた。 もともと体が弱く、一度寝込むとなかなか治らない主を、雫は献身的に看病した。 ほとんどつききりで世話をして、ようやくひと心地ついたところで 今度は雫のほうが倒れた。 次は自分が看る、という灯真に、ウイルスが同じとは限らない、 またうつしあいになるからと、お抱え医師の長瀬は雫に近づく事を禁じた。 灯真が2週間、雫が1週間寝込んで、今日、ようやく長瀬の許しを得て、 雫が灯真の部屋をたずねたのだ。 「ねえ、しよう、雫」灯真が雫の袖を引いた。 「まだお昼間だよ?」 「かまわないよ。さあ。」 灯真が言い出したら聞かないことはわかっていたし、長く肌を合わせていないので 雫のほうにも灯真を渇望する想いはあった。 「待って。シャワー浴びて来るから。」ようやくそれだけは承諾させて、 バスルームに急いだ。あまり待たせてはまたご機嫌が悪くなる。 苦笑しながら着ているものをとって、シャワーの前にトイレに行った。 さっき灯真に抱きつかれて少し反応してしまった自分のものを手のひらで掴んで 扱く。 自分が先に達してしまわないように。灯真をしっかり受け止めて満足させてやるために、 いつもしていることだった。 若い雫のからだは、素直に刺激にこたえて、すぐに限界に達した。 「んっ・・・・。」ちいさく呻いて辺りを汚さないように処理すると、 大急ぎでシャワーを浴びる。隅々まで綺麗に洗い流して、まだ湿った体を バスローブに包んで寝室に戻った。 灯真は衣類を脱ぎ散らかして、ベッドのふちに裸で腰掛けてぼんやり待っていた。 外はまだ明るいので、カーテンが閉まっていても部屋の中まで光がうっすら 差し込んでいた。 灯真の白いからだが光で包まれているように見える。 灯真の前に立ち、腰をかがめて目をあけたままキスをした。

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