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第13話

目の前に灯真の頬の産毛が見えた。視線を移すと長い睫毛と青白い瞼が、 反対側にはちろちろと雫を求めて蠢く舌と赤い唇。 抱かれるのは自分の方でも、この美しいひとをいま独り占めしていると思うと 征服欲に似た恍惚がうまれた。 そのまま灯真の膝をわって足のあいだに跪いた。 腰を抱くように両手をまわして、股間に顔を埋める。 灯真の性器に、軽く触れるだけの口づけを何度もする。 ため息が頭上に聞こえて、肩に置かれた灯真の手に力が入った。 舌で包むようにしながら半分ほどを口に含むと、顔をあげて灯真の顔を見た。 頬を紅潮させ、眉間に皺をよせて唇を震わせている主をうっとりと見つめながら 感じやすいところを舌で攻める。 「ん・・・。」唇が開いて、あえかな声が漏れるのを聞きながら 体積をましてくる灯真を口腔に押し込める。 勃っていても少しやわらかさを残すあたたかい感触を、粘膜全体で味わう。 さらに灯真を悶えさせようとしたのだが、口いっぱいに頬張ってしまうと 舌が思うように使えなくなった。 もたもたとまさぐるように動かしてみるが、うまくいかない。 思案しながら、唇を緩めてみたところで、頭の上で、くすり、と笑い声がした。 「雫、へたくそ。」 ショックで思わず動きがとまった。 すっと灯真の手が降りて来て、雫の頬に触れた。 灯真の指は頬から顎関節をなで、それから自分自身と、それを銜えこんでいる 雫の唇の境界をゆっくりとなぞりはじめた。口の中の灯真がぴくっと震える。 「雫のいやらしい顔が見られなくて残念だな。」 灯真の声は笑っていたが、雫はひどく切なくなった。 「さあ、もういいからそれ脱いでここへ上がれ。」 灯真が主導権を取り戻すようにベッドをポン、とたたいて言った。

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