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第24話

何も考えず、ただただ助けを求めて、灯真の部屋に飛び込んだ。 「灯真さん!!」 だが、驚いた表情でこちらに顔を向けた彼をみたとたん、雫は我にかえった。 「しずく?どうした。なにかあったのか。」 ただならぬ気配を察知して、こちらに向って来る灯真を、あわてて制した。 「だめ・・・来ちゃだめです!」 「・・・・・?雫・・・血の。血の匂いがするけど・・・怪我してるのか。」 訝りながらさらに近寄って来る灯真。 「ごめんなさい!」 急いで部屋を飛び出した。 今の自分に触れてはいけない。あの人の血で、灯真を穢したくなかった。 ああ、でもどうしよう。 自分の部屋へ行くか、それとも長瀬に助けを求めるか。 廊下を走り出したとき、後ろでどさりとなにかが倒れる音がした。 振り返ると、自分を追って来た灯真が、廊下の飾柱にぶつかって倒れていた。 「灯真さん!」反射的に踵をかえして灯真のもとに駆けつけた。 助け起こそうとすると、逆にがしっと腕を掴まれた。 「・・・捕まえた。」微笑みながら手を回して来た灯真の袖や指に、返り血が付いた。 「ねえ、べたべたしてるよ・・・。何があった?大丈夫なのか、雫。」 千景の血で汚れて行く灯真を見ていられなくて、顔をそむけたまま、 「僕・・・、僕・・・。」といいよどんでいると、 突然後ろから襟首を掴まれた。 「ひっ。」驚いて息がとまった。 長瀬医師が、蒼白な顔で立っていた。 二人を抱えるように立たせると、 「とにかく二人とも、シャワーだ。」と、バスルームに引きずっていった。 汚れた衣類をすべて袋に入れ、体についた血を流し終えると手早くかわりの 衣類を着るように指示された。 灯真を先に部屋に戻そうとする医師に、彼は頑として聞き入れず、 長瀬とともに雫のしたことを聞いた。 「通報があまり遅れると怪しまれる。君の痕跡を消すのは無理だ。すぐに身を隠しなさい。」 長瀬の言葉に雫は驚いた。 「僕、自首します。ちゃんと警察にいかなきゃ。」 すると長瀬は、怖い目をして言った。 「動機はどう、説明するつもりだ。灯真がされたことも言わなくてはならなくなる。」 「そ。それは・・・・。」 「世間はおもしろおかしく騒ぎ立てるだろうね。」 「・・・・・。」 「わたしは灯真を守りたい。」 それは雫も同じだった。深く頷く雫を見て、長瀬は続けた。 「わたしの友人が田舎で農業をやってる。たぶん彼なら、君を匿ってくれるだろう。  手紙を書くから、最小限の荷物を用意して。すぐだ。」 「僕も行く。」 灯真の言葉に二人が目をみはった。 「何を言ってるんだ。君は無理だよ。」 「行く。雫と離れたくない。」 灯真は手探りで雫の腕を探し当てると、ぎゅっと握りしめた。 「あの人を刺したのは僕のためなんだろ。雫が逃げるなら僕も逃げる。」 長瀬は眉間に深く皺を刻んで天井をあおいでいたが、 「わかった。ではすぐ準備をしよう。」と言った。 「ありがとう、先生。」嬉しそうに微笑む灯真に、 「君の着替えを取って来るから、ここで待っていなさい。」と声をかけ、 雫に目配せすると、バスルームから出た。雫もすぐに、 「じゃ、僕も一度部屋に戻るから、待ってて。」と言って長瀬を追った。

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