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第64話

事務所のような部屋に連れ込まれた。 あとの二人もあわててついて入って来る。 「おもしれえ。女より気持ちいいことしてくれんなら、考えてやってもいい。」 「おい、大丈夫かよ。喰いちぎられたらシャレになんねえぞ。」 仲間のその言葉に、リーダーは雫を蹴り上げていた男のほうを向いて 「最初にお前。お前いけ。」と言った。 「えっ?俺?」男は好奇心と恐怖の入り交じった表情で、雫とリーダーを 見比べていたが、「マジかよ」と呟いて椅子にすわった。 リーダーが雫の肩を押してその前に跪かせる。 「てめえ、妙なマネしたらあのアマただじゃおかねえからな。」 「わかってる。早く出せ。」 雫の言葉に、ジッパーを下げてまだ小さいままの自分の一物をつまみ出した。 後ろ手に縛られたまま、男の股間に顔を近づける。 「手が使えるともっとよくしてやれるんだけど。」 こみ上げる吐き気をこらえて、自分を痛めつけた男の物を口に含んだ。 「ひあ。」男が妙な声をあげた。口のなかのものが素直な反応を示した。 殴られてところどころ切れているのだろう、痛みと、鉄の味が口腔内に広がる。 あとは・・・・。 何も考えるな。 何も考えるな。 目を固く瞑って、憤りと不快感で歯を立てそうになるのを必死で堪える。 部屋のなかに雫の舌がたてる、淫微な音が響き始める。 ふ。男の喉からため息が漏れた。鼻の穴が大きく広がり、口が惚けたように開いた。 「お、おい。」 「どうだ。」 「すげえ。こいつまじでやべえよ。」 男の恍惚とした声を聞いて、あとの二人がごくりと唾を飲んだ。 ずいぶん長い時間別室に連れていかれていた雫が美風のもとに戻ってきた。 顔だけではなく、髪やシャツの胸元にまで、べっとりとしたものがこびりついているようだっ た。美風からかなり離れたところに座り込んだ雫は、そのままごろりと彼女に背を向けて床に 転がった。 「櫂さん。」躄り寄ろうとする美風を「来ないで。」と制する。 「今僕、すごく汚いから。 そばに来ちゃだめだ。」 美風はかまわず近づいた。つんと生臭い匂いが鼻孔に来た。 「さすがに飲むのはイヤだったから外したら、あっちこっちにかかっちゃった。」 背をむけたままそう言うと、ははは、と小さく笑って、 「ああ、高校生にこんなこと・・・。ごめん。」と謝った。 「櫂さん」美風はもう、泣きながら名前を呼ぶ事しか出来なかった。 なにがあったか、説明されなくてもわかる。胸がキリキリと痛む。 私の。私の身代わりになったんだ・・・そう思うだけで体が芯から震えた。 しばらくして犯人の一人・・・雫を蹴り上げた男が来て、黙って美風の後ろに回り、 さっと目隠しをした。 「ひっ。」美風が身を固くして小さく叫び、雫ががばりと半身を起こした。 「釈放だってよ。」 つまらなそうにそう言い捨てると、美風を立たせて出口のほうにひっぱっていく。 「櫂さん。櫂さん。」泣きながら自分を呼ぶ彼女の声が遠ざかるのを見届けて、 雫は大きくため息をついた。 車のエンジン音が聞こえ、それも次第に遠ざかっていく。 出来る事はやった。 灯真さん、これでよかった? あとは・・・・祈るだけだ。 美風が無事に帰れますように。

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